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Merry X'masを そこで 言う
Texpo 2周年記念の800字バトルに参加しました。
自分の中で「黒猫と日本人形」というテーマが先にあって、
そこにこのバトルのお題である「展望台」「手袋」「クリスマス」を
追加で当てはめて、お話ができました。
久し振りのお話作り。
わくわくして楽しくて 出来より何より
私やっぱり この時間が好きだ・・
そう感じた今回の参加でした。何だか感謝の「創作」でした。
トキ婆が起きない。
お腹すいたぞ、トキ婆、ぺろり舐めた頬は 酷く冷たかった。
布団に潜り込んで寄り添ってみたが トキ婆はますます冷たくなっていく。
箪笥の上、「ゆき」は いつも通り座っている。
朝の光を受けて、ゆきの眼尻がキラリと光ったような気がした。
電話だぞ、にゃあにゃあ鳴いたら隣の人がやっと来た。
それから後は、知らない人間がばたばた行き来して
トキ婆は寝たまま連れて行かれた。
それっきり。
*
「クリスマスイヴに遺品整理とはな」
今日はトキ婆の息子の誠と嫁が来た。
「そんなに物、多くないね。お義母さん綺麗に片付けてる」
「倹約家だったしな。あ、これ」
くすんだ銀色のメダルを誠が缶の中から摘み上げる。
「子供の頃、山の展望台で買ったヤツだ」
何てことない所なんだけど、家族でよく行ったっけ・・
そんな話をしながら 二人は家中の物を次々仕分けしていく。
トキ婆が家の中からどんどん消える。
「これって・・お人形の手袋?」
ゆきや他の飾り物を箪笥から下した後、嫁が赤い毛糸で編んだ物を見つけた。
最近までトキ婆が編んでたヤツだ。
誠は苦い物でも食ったような顔をして黙り込んだ後
「その日本人形のかな。母さん『ゆき』って呼んでて・・」
ぽそりと言った。
「亡くなったお姉さんの名前?」
「小物や飾り作ったり・・話しかけたりもしてた」
「そんな大事なお人形なら・・どうする?捨てるって訳にも・・」
「じゃ、持って帰る?」
「え、それも・・」
人形供養がどうとか言ってるのを聞きながら、そろり起き上ったら
「きゃ、黒猫」
嫁が初めてオレに気がついた。
*
「その運び方、何とかならない?着物 汚れちゃうじゃない・・」
「手袋、ちゃんと嵌めて欲しいな。脱げそうよ」
「るさい、人形のくせに。歩けないなら黙ってな」
「どこ行くの?」
「展望台」
「『母さん』の思い出の場所?」
そう、オレの親が拾われた場所でもある。
辿り着いたら、コイツとトキ婆とトキ婆の大事にしてた全ての思い出に
「メリークリスマス」を言う。
その後はまだ考えていない。
赤い手袋をした日本人形をくわえて歩く、奇妙な黒猫を見かけたら
どうぞ そっとしておいて欲しい。
自分の中で「黒猫と日本人形」というテーマが先にあって、
そこにこのバトルのお題である「展望台」「手袋」「クリスマス」を
追加で当てはめて、お話ができました。
久し振りのお話作り。
わくわくして楽しくて 出来より何より
私やっぱり この時間が好きだ・・
そう感じた今回の参加でした。何だか感謝の「創作」でした。
トキ婆が起きない。
お腹すいたぞ、トキ婆、ぺろり舐めた頬は 酷く冷たかった。
布団に潜り込んで寄り添ってみたが トキ婆はますます冷たくなっていく。
箪笥の上、「ゆき」は いつも通り座っている。
朝の光を受けて、ゆきの眼尻がキラリと光ったような気がした。
電話だぞ、にゃあにゃあ鳴いたら隣の人がやっと来た。
それから後は、知らない人間がばたばた行き来して
トキ婆は寝たまま連れて行かれた。
それっきり。
*
「クリスマスイヴに遺品整理とはな」
今日はトキ婆の息子の誠と嫁が来た。
「そんなに物、多くないね。お義母さん綺麗に片付けてる」
「倹約家だったしな。あ、これ」
くすんだ銀色のメダルを誠が缶の中から摘み上げる。
「子供の頃、山の展望台で買ったヤツだ」
何てことない所なんだけど、家族でよく行ったっけ・・
そんな話をしながら 二人は家中の物を次々仕分けしていく。
トキ婆が家の中からどんどん消える。
「これって・・お人形の手袋?」
ゆきや他の飾り物を箪笥から下した後、嫁が赤い毛糸で編んだ物を見つけた。
最近までトキ婆が編んでたヤツだ。
誠は苦い物でも食ったような顔をして黙り込んだ後
「その日本人形のかな。母さん『ゆき』って呼んでて・・」
ぽそりと言った。
「亡くなったお姉さんの名前?」
「小物や飾り作ったり・・話しかけたりもしてた」
「そんな大事なお人形なら・・どうする?捨てるって訳にも・・」
「じゃ、持って帰る?」
「え、それも・・」
人形供養がどうとか言ってるのを聞きながら、そろり起き上ったら
「きゃ、黒猫」
嫁が初めてオレに気がついた。
*
「その運び方、何とかならない?着物 汚れちゃうじゃない・・」
「手袋、ちゃんと嵌めて欲しいな。脱げそうよ」
「るさい、人形のくせに。歩けないなら黙ってな」
「どこ行くの?」
「展望台」
「『母さん』の思い出の場所?」
そう、オレの親が拾われた場所でもある。
辿り着いたら、コイツとトキ婆とトキ婆の大事にしてた全ての思い出に
「メリークリスマス」を言う。
その後はまだ考えていない。
赤い手袋をした日本人形をくわえて歩く、奇妙な黒猫を見かけたら
どうぞ そっとしておいて欲しい。
どんな花火もきっと楽しい
涼しくなりました・・・・ もう秋ですね。
ぼやぼやしているうちに 季節感無視の更新となりました(汗)
TEXPOの夏のバトルで出したもので 「夏らしい作品を」がテーマ。
今更ですが、去りゆく夏を思い出し(無理やり)お読み頂けると幸いです。
暑い!海だ!と、いかにもなノリで、付き合って日も浅い雄太と海に行き、伊理ちゃんと知り合った。
宿のロビーで初めて見た時、伊理ちゃんは随分年上の男と一緒だった。彼女が色々と話し、相手は穏やかな聞き役という感じだ。宿や海辺で伊理ちゃんとは何度か会ってお喋りしたが、男の方はそれから見かけない。雄太は「あれは絶対に不倫だ」と、細かい点を挙げてはどうでもいい推理を披露し、得意げに鼻の穴を膨らませた。
ゴシップ好きのオバさんみたいなその性格にげんなりし、雄太の鼻の穴が嫌いになった。
その後は早い。雄太のすることが全て馬鹿っぽく見え、水着のセンスに相容れないものをひしと感じ、3日と持たず我慢の限界が来た。
─打ち上げ花火なんだよね。いつも。
待ち合わせたオフィス近くの店で、伊理ちゃんに近況を報告する。偶然にも互いの職場はすぐ近くだ。窓の外、ツクツクボーシがひと際騒々しく鳴いて飛び立った。
─だったら線香花火かな、私。
融けかけの氷をストローでつつきながら、伊理ちゃんは言う。
消えたかと思っても、ちろりとまた花を咲かせ、祈るように見つめる中、ぽとり 玉を落として終わる。そんな なのかな。伊理ちゃんの恋。
─子どもの頃から 線香花火が一番好きだった。由香さんは?やっぱり打ち上げ花火?
私は、と考える。線香花火は、暗がりでどっちが先だか解らなくて火をつける側をよく間違えた。朝になって見ると大抵、気付かずにやり残した線香花火が数本落ちていた。
打ち上げ花火。そう、花火大会が大好きだったな。夏も終わりだねぇ、なんて言いながら一緒に見たのは毎年、違う彼氏だ。
─けど、どれも結構いい思い出だよ。相手はどうだか解らないけどね。
そう言って笑うと、伊理ちゃんもくすっと笑った。
─あの人、中学の時の先生。私、時々手紙を出してたの。でも住所不明で手紙が返ってくるようになった。最近、あの近くの学校に勤めてるって噂聞いて。だから行ったの。あそこで偶然知ったみたいな事言って出て来て貰った。泊まってたのは私一人。情けないよね、振られたくないから 告白もしないで。
線香花火でもないね。湿気ちゃった花火。火も付いてない。
結局、デザートを3種類も追加し、コーヒーを4回おかわりして、休憩時間いっぱい二人で過ごした。お腹苦しいっ!って笑って別れた後 母からのメールに気がついた。不況でスポンサー探しが難しく、花火大会は中止だそうだ。
今年はこのまま田舎に帰らずに、伊理ちゃんと二人 線香花火大会をしよう。
うろこ雲 眺めながら、そう思う。
ぼやぼやしているうちに 季節感無視の更新となりました(汗)
TEXPOの夏のバトルで出したもので 「夏らしい作品を」がテーマ。
今更ですが、去りゆく夏を思い出し(無理やり)お読み頂けると幸いです。
暑い!海だ!と、いかにもなノリで、付き合って日も浅い雄太と海に行き、伊理ちゃんと知り合った。
宿のロビーで初めて見た時、伊理ちゃんは随分年上の男と一緒だった。彼女が色々と話し、相手は穏やかな聞き役という感じだ。宿や海辺で伊理ちゃんとは何度か会ってお喋りしたが、男の方はそれから見かけない。雄太は「あれは絶対に不倫だ」と、細かい点を挙げてはどうでもいい推理を披露し、得意げに鼻の穴を膨らませた。
ゴシップ好きのオバさんみたいなその性格にげんなりし、雄太の鼻の穴が嫌いになった。
その後は早い。雄太のすることが全て馬鹿っぽく見え、水着のセンスに相容れないものをひしと感じ、3日と持たず我慢の限界が来た。
─打ち上げ花火なんだよね。いつも。
待ち合わせたオフィス近くの店で、伊理ちゃんに近況を報告する。偶然にも互いの職場はすぐ近くだ。窓の外、ツクツクボーシがひと際騒々しく鳴いて飛び立った。
─だったら線香花火かな、私。
融けかけの氷をストローでつつきながら、伊理ちゃんは言う。
消えたかと思っても、ちろりとまた花を咲かせ、祈るように見つめる中、ぽとり 玉を落として終わる。そんな なのかな。伊理ちゃんの恋。
─子どもの頃から 線香花火が一番好きだった。由香さんは?やっぱり打ち上げ花火?
私は、と考える。線香花火は、暗がりでどっちが先だか解らなくて火をつける側をよく間違えた。朝になって見ると大抵、気付かずにやり残した線香花火が数本落ちていた。
打ち上げ花火。そう、花火大会が大好きだったな。夏も終わりだねぇ、なんて言いながら一緒に見たのは毎年、違う彼氏だ。
─けど、どれも結構いい思い出だよ。相手はどうだか解らないけどね。
そう言って笑うと、伊理ちゃんもくすっと笑った。
─あの人、中学の時の先生。私、時々手紙を出してたの。でも住所不明で手紙が返ってくるようになった。最近、あの近くの学校に勤めてるって噂聞いて。だから行ったの。あそこで偶然知ったみたいな事言って出て来て貰った。泊まってたのは私一人。情けないよね、振られたくないから 告白もしないで。
線香花火でもないね。湿気ちゃった花火。火も付いてない。
結局、デザートを3種類も追加し、コーヒーを4回おかわりして、休憩時間いっぱい二人で過ごした。お腹苦しいっ!って笑って別れた後 母からのメールに気がついた。不況でスポンサー探しが難しく、花火大会は中止だそうだ。
今年はこのまま田舎に帰らずに、伊理ちゃんと二人 線香花火大会をしよう。
うろこ雲 眺めながら、そう思う。
さよなら とけちゃったかき氷
「おやつ何にしようか」
ママは冷蔵庫の前で思案した後、冷凍庫を開けた。
「そうだ、かき氷 してあげるね」
シロップをかけただけのかき氷はあんまり好きじゃない。
抹茶のシロップにつぶあん添えて宇治金時か、イチゴでもせめてミルクぐらいかかってたらな と思う。
でも、「タケル君」と向かい合って座っても、何を喋ればいいかさっぱり解らないから、黙々と食べた。
黙って食べたら余計、頭がキンとした。
「ふう、一気に食べちゃったよ、美味しかったぁ」
わざとらしいくらいのテンションで言ってみる。
タケル君は スプーンでかき氷の表面をぺたぺた叩くばかりで、
器の中はちっとも食べた様子がない。氷はほとんどピンクの色水になっていた。
─感じ悪っ。せっかくママが用意したのに。
ちょっと睨んでやる。
何でこんな子と急におやつ食べることになったんだ。
その日、向いの芳子さんは腰を痛めて病院に行った。「タケル君」は芳子さんの孫で、この夏休みの間 独りで泊まりに来ているらしかった。
「小さい頃はよく一緒に遊んだのよ」
ママは言うけど、あたしには全く記憶がない。小5にもなっていきなりそんな男子と遊べといわれても戸惑うばかりだ。加えてこの子ときたら愛想もないし、何を考えてるのか全く分からない。
「嫌いだったら嫌いって言えばいいじゃん。無理しないでさ」
あたしは言ったけど、もちろんそれはかき氷のことだった。
なのにタケル君は 急に顔を真っ赤にし、唇をぎゅっと噛みしめてこちらを見、
そしてそのまま だんだん青ざめていった。
一瞬の内に こんなに人の顔色が変わるのをあたしは初めて見たのだった。
泣くんじゃないかと思った。殴りかかって来たらどうしようと思った。
だけどタケル君は泣きも殴りもせず、いきなりうちを飛び出して行った。
何だかもの凄く後味の悪い かき氷だった。
その次の日からタケル君は、向かいの家からいなくなった。
腰を痛めたお義母様にはいつまでも預けられないと言って、タケル君のお母さんが迎えに来たからだ。
「離婚するって決まったんだって。タケル君のところ」
ママは窓の外を見ながら そう言った。向かいの庭先に芳子さんが ぽつんと立っていた。
いつもより小さく小さく見えた。
「暑いねぇ」
通りすがりを装って 芳子さんに声を掛けた。
「ああ、やっちゃん、かき氷好きかい?」
芳子さんは あたしにくしゃりと笑いかける。
「孫が夏の間泊まるっていうからさ、大きいの買い込んじゃって。 イチゴのシロップ、あげようか」
あたしは こっくり、ただ頷くしかできなかったんだ。



