STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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信号待ちの間に

Texpoのバトル参加作品。お題は「カーテン、携帯電話、信号」でした





「もしもし 由香子? あたし。うん 今 外」
車の音聞こえるけど・・と携帯から由香子の声がした。
とたん 引きつっていた頬が緩んだ。

泣いてるの?どした?由香子がいきなり聞いてきた。
「まさか ばっかじゃないの。泣かないよ」

いきなり掛けて来て 何でその言い方よ、流れが見えないよ、何怒ってる? 
由香子が聞く。

相変わらず察しのいい友人だ。

「鼻声?ああ これは 花粉症。そう、花粉症」
あたしは答えながら 鼻をすする。アレルギーがないのが 自慢だったくせに。
それでも 由香子にはバレバレで ふうん、なんて言いながら 上手く先を促すから
ついつい こちらの事情なんかを 吐き出してしまう。いつものことだ。

「カーテンなんて 何だっていいよ、好きなんの選んできたら なんて言うんだよ。
信じらんない。新居だよ 新婚の 初めての 二人の部屋なんだよ。」
黙って聞く由香子にあたしは まくしたてる。

何色にしよう どんな家具にしようって 一緒に迷うのが楽しいんじゃないの?
もう アウトだよ。こんなに 夢破ってくれて。
こんなとこで躓いたら これからうまくいかないこといっぱいあるよ
考え直そうかな 結婚。まだ間に合うよね。


あらら、とか へええとか そうだね、とか
由香子は合間に控えめな相槌を打つ。ときどき あんたらしいわって くすくす笑う。
由香子の笑った時の顔が浮かぶ。


どこが好きだったんだっけ?  今さらのように 由香子が聞く。
これって いつも あたしがヤツと喧嘩した時に 彼女が聞くことのひとつだ。
そして あたしもいつも 律儀に答えを探すのだ。

「どこだか もうわかんなくなったよ。優しいっていうのは こんなのとは違うよ。
好きにしていい 任せる 君の趣味でいいなんて 優しくないよ 全然優しくなんかない。」

付き合い始めたきっかけって 何だったっけって 由香子がとぼけて聞いてくる。
知ってるくせにね。ずっと一緒にいたんだ。あたしたち。みんな。

「やきそばだったよねって。また それ言うの?」あたしは 言う。何度も何度も話した思い出話。

学祭だったよね。よく覚えてるよね。
あの時は楽しかったよね。確かに楽しかった。
若かったねぇ。うん、若かった。
汗でTシャツ濡らしてさ。
頭と首に巻いたタオル 見るに見かねて取り替えてあげた。世話女房みたいにね。

料理得意な人なのかって 勘違いしたけど それしか作れなかったじゃない。
でもさ、よく皆で 下宿に乗り込んで 無理やりやきそばパーティーしたよね。
雑魚寝して 彼がいつも風邪引いた。
起きたらいつも あたしの上に毛布が掛かってた。

そうやって 由香子はあたしに色んなことを話させる。
鼻声が酷くなってることには触れないで。


「信号待ちって なんかさ、待ってたら長いよね。」
あたしが言う。電話の向こうで また由香子が笑う。
思わない? あれ そう?

「とおりゃんせ」の音って鳴らなくなったね。いつの間にか。
変だったよね。音程が何だか 間抜けなの。

怖いながらもとおりゃんせ
なんてさぁ。 どんだけ 恐ろしいんだよ。横断歩道。
あれ、こんな話って 前もしたっけ。

で、どうすんの?由香子が聞く。
信号が青に変わり 周りの人が動き出す。前へ。

「行くんでしょ?今から 彼の部屋。」

うーん、と 考える。
「由香子と話してたら 何だかスッキリした」
ありがとね。ごめんね。いっつも。今度おごるよ。

で? ともう一度由香子が聞く。
答えはもう 解ってるんだよね?由香子にはきっと。


「やきそば作って待っててくれたら ちょっとだけ 許すかも。」
由香子のくすくす笑いの余韻を感じながらもうすこし歩いて 
横断歩道渡りきったら 電話を切ろう。


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Merry X'masを そこで 言う

Texpo 2周年記念の800字バトルに参加しました。
自分の中で「黒猫と日本人形」というテーマが先にあって、
そこにこのバトルのお題である「展望台」「手袋」「クリスマス」を
追加で当てはめて、お話ができました。
久し振りのお話作り。
わくわくして楽しくて 出来より何より 
私やっぱり この時間が好きだ・・
そう感じた今回の参加でした。何だか感謝の「創作」でした




トキ婆が起きない。

お腹すいたぞ、トキ婆、ぺろり舐めた頬は 酷く冷たかった。
布団に潜り込んで寄り添ってみたが トキ婆はますます冷たくなっていく。
箪笥の上、「ゆき」は いつも通り座っている。
朝の光を受けて、ゆきの眼尻がキラリと光ったような気がした。

電話だぞ、にゃあにゃあ鳴いたら隣の人がやっと来た。
それから後は、知らない人間がばたばた行き来して 
トキ婆は寝たまま連れて行かれた。
それっきり。


「クリスマスイヴに遺品整理とはな」
今日はトキ婆の息子の誠と嫁が来た。
「そんなに物、多くないね。お義母さん綺麗に片付けてる」
「倹約家だったしな。あ、これ」
くすんだ銀色のメダルを誠が缶の中から摘み上げる。
「子供の頃、山の展望台で買ったヤツだ」
何てことない所なんだけど、家族でよく行ったっけ・・
そんな話をしながら 二人は家中の物を次々仕分けしていく。
トキ婆が家の中からどんどん消える。

「これって・・お人形の手袋?」
ゆきや他の飾り物を箪笥から下した後、嫁が赤い毛糸で編んだ物を見つけた。
最近までトキ婆が編んでたヤツだ。
誠は苦い物でも食ったような顔をして黙り込んだ後 
「その日本人形のかな。母さん『ゆき』って呼んでて・・」
ぽそりと言った。

「亡くなったお姉さんの名前?」
「小物や飾り作ったり・・話しかけたりもしてた」
「そんな大事なお人形なら・・どうする?捨てるって訳にも・・」
「じゃ、持って帰る?」
「え、それも・・」
人形供養がどうとか言ってるのを聞きながら、そろり起き上ったら
「きゃ、黒猫」
嫁が初めてオレに気がついた。


「その運び方、何とかならない?着物 汚れちゃうじゃない・・」
「手袋、ちゃんと嵌めて欲しいな。脱げそうよ」
「るさい、人形のくせに。歩けないなら黙ってな」

「どこ行くの?」
「展望台」
「『母さん』の思い出の場所?」
そう、オレの親が拾われた場所でもある。

辿り着いたら、コイツとトキ婆とトキ婆の大事にしてた全ての思い出に
「メリークリスマス」を言う。
その後はまだ考えていない。

赤い手袋をした日本人形をくわえて歩く、奇妙な黒猫を見かけたら
どうぞ そっとしておいて欲しい。

拍手お礼です

表紙ペンギン

お久し振りです。
TEXPOでのそのそと更新しています。
ここの記事と内容は ほぼ一緒です。

ぼやぼやしているうちに今年も半年経ちました。
新しい仕事もだいぶ慣れて、
ムスコの早朝練習のための早起き弁当作りも 
それなりに 鼻歌交じりでできるようになりました。
夜、早い時間に眠くなるのがモンダイですが・・。

こんなに 更新を怠っているのに、どちらからかここへやって来て
なぜか「拍手」をくださるキトクな方が 数日おきにおられて
大変恐縮&感謝しています。

画像はTEXPOで出した新しい「WEB」です。
過去描いた画像に新しいことばをつけて ぼちぼちUPしています。



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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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