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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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「り」~リボン結んで(Merry X’mas!)

クリスマスのstoryは2回目です。
去年のものとあわせ 新しくカテゴリーでまとめてみました。
宜しかったら あわせてどうぞ。



20051204131141.jpg





「お疲れっ。」

屈託ない笑顔と 湯気立ち上る 肉まん。
従業員出入口から外に出たら待っているのは
いつもタイミングよく「欲しいもの」。

  

「ラッキー!あったかい物 欲しかったんだぁ
 ・・お腹もグゥグゥ鳴りっぱなし~」

「でしょ、でしょ。」

大学の「B級グルメサークル」の後輩のカズシが
こうしてナホコの所へやってくるようになって もう2年近くなる。

特に都合を聞くでもなく 約束をするでもない。

シフト勤務を終え、何か食べて帰りたいな、と思うとき
カズシは いつも いいタイミングで そこにいた。



今年 卒業したカズシは ディスプレイの会社に入った。

ナホコの勤務するデパートが 閉店した後や定休日に
ショーウィンドウの飾りつけの作業などをする。

すれ違いの仕事になってしまったけれど 
それでも今日のように
何か 美味しいちょっとしたものを持って、
やっぱり カズシは そこに立っている。

      
    ☆


「今年のクリスマスプレゼントは ギョーザ100個で決まりだね!」

街はキラキラ電飾が綺麗で
クリスマスに向かって素敵にムードを盛り上げている。

確かにこの前一緒に見たポスターの
あの一口餃子は 美味しそうだった。

100個・・と言った記憶はないけれど
これならいっぱい食べられそうだなぁ、食べたいなぁ

・・と あのとき ナホコは言った。

でも・・・なんでクリスマスプレゼントが餃子なんだぁ?

この いつも元気な後輩とのことも  よくよく考えたら
食べ物でしか繋がってない・・のかもしれない・・・

ナホコは 肉まんに嬉しそうにかぶりつくカズシの横顔を
チラリ 見る。



そりゃ 一緒に食べたものは どれも 美味しかった。

小汚い裏通りのラーメン屋さんの ニンニクたっぷりのラーメン、
何で コレなの?!って言いながらも 結構美味しかったモツなべ。

地下足袋のおじさんがたくさんいた 一品料理屋さん・・
豪快なおばちゃんがやっている 焼肉屋さん

どの思い出も オシャレなデートには程遠いけど 
美味しいものを食べているときが一番幸せ!って感じの 
カズシの顔を見ながら食べるのは 
ナホコの楽しみでもあった。





    ☆


「ナホコさん・・クリスマスイヴ・・って 予定あるよね・・」

おずおずと聞いてきたのは 職場のモリノ先輩だった。

優しくて真面目で よく相談にも乗ってくれて色々助けてくれる。
誰からも いい人だと言われる・・そんな 先輩だ。


「よかったら・・・なんだけど 
 ディナークルーズなんて 興味ないかな、なんて思って・・
 確か ボクと同じシフトだったから・・・ 

 早番で 上がるのって やっぱり無理かな・・?」
 
ディナークルーズ・・リッチでキラキラした その語感
頭の中の天秤のギョーザの皿が ピコンと跳ね上がる。

クリスマスが忙しいとは言っても、全部のフロアではない。
残業、応援・・ 拝み倒されての交代
・・クリアする項目を 頭の中で考える。


「え・・予定ある・・といえば ・・あるような・・・」

カズシの笑顔がギョーザに加担して 天秤はまたユラユラ戻る。


─ 2、3日中に返事欲しいな。

モリノ先輩はそう言って  
後ろ姿で 「ヨッシャ!」とガッツポーズした。

バレンタインに 課の女の子皆でした義理チョコの お返し、
ナホコのだけ リボンのかかったオシャレなラッピングだったこと
後から知った。



    ☆



「ほい!」

目の前にニュっとつきだされた 棒付きアメ。
従業員出入り口で カズシはニコニコ待っていた。

「プリン味、ナホさん 大好きでしょ?」



そう 色々悩んだり 身体が疲れたときは 甘いもの。
プリン味の このアメ大好き・・・。

なんで いつもこんなに 解かっちゃうんだろうな
・・ナホコは カズシをまじまじと見つめる。



「あのさ・・イヴなんだけど」

「あ、オレ 仕事少し入っちゃってさ
 ・・でも心配しなくてもいいよ ギョウザは必ず届けるから。」

頭の中で オシャレなリボンが 
ヒラヒラ舞いながら空の彼方へ遠ざかる。



「わたし・・・、先輩にディナークルーズ 誘われてるんだよね。」

カズシは 棒付きアメをくわえたまま 横目で責める。
─ 何で責められなきゃなんないんだ・・


「・・・そういうロマンチックなムードとかさ、
 私だって 憧れたりもするんだから。

 クリスマスにオシャレなところに連れて行ってもらうなんて
 そんな事だって
 た、たまには 私だって 期待とかも するし・・・。」

カズシが ビックリ顔で ナホコを見つめる。
まだ 表情が ふざけている 。



「何 その ディナーナントカっていうの・・? 
     そいつと ナホさんは行きたいわけ?」

「そいつ なんて言わなくってもいいじゃない、
 先輩のこと何にも知らないくせに。

 プレゼントにリボンかけて 素敵にラッピングして
 ・・そういう気持ちって何だかすごく 嬉しい時ってあるんだから

 センスのいい気遣いとか そういうので
 大切に思われてるって 感じたときって
 感激だったりも・・・するんだから!!」



まだ なめきれてない 大好きなプリン味の棒付きアメ
口の中にもまだ 味が広がってるっていうのに

一体私は 何を言ってるんだろう・・そう思いながらも、
ナホコの口からは そんな言葉が続けて出てしまった。






「今日はここで仕事するから。」

オシャレなファッションビルの前で カズシと別れた。
一人でとぼとぼ帰り道、
プリン味のアメが こんなにまずく感じたのは初めてだった。

カズシは それから2日間 連絡して来なかった。



   ☆



先輩に返事をしないまま 2日が過ぎた。

クリスマス商戦で仕事は忙しく 忙しくしているほうが
何にも考えなくて良くて 楽な気がした。

へとへとに疲れ 足は棒。 声がかれて肌もかさかさ。
外に出ると 北風が冷たくて 震え上がった。

マフラーをぐるぐるに巻きつけて 俯きがちに歩き出すと
見慣れた スニーカーが 行く手をさえぎった。



「欲しかったら あげる。
   ナホさんの好きな シナモン入り。」

コーヒーショップのロゴの入ったカップには ココアが入っていた。

手渡された ココアのカップが熱くって 
指先から 身体全体にじわじわ温かさが広がってくる。

一口すすって、ああ、今 これが飲みたかったんだ
・・ナホコは心からそう思った。



「それと・・コレ」
餃子屋のマークの入った紙袋。

「クリスマスには、まだ早いから
 プレゼントとかそういうのじゃなく・・・。

 家 帰って食べて。あ、100個は ないけどね。」
紙袋を押し付けるように 渡す。



「すんげー嬉しそうな顔するんだよな、
 食い物の話する時のナホさんってさ。

 美味しいもの食べてるときって 
 ナホさん むっちゃ幸せそうな顔してて ・・・。」

「・・・・。」

「だから ついつい そういうのしか オレ、
  考え浮かばなくなっちゃって・・・・、あ、コレ」

ポケットをごそごそして カズシが出してきたのは
ヨレヨレになった 銀色のリボン。

「シャレで ギョーザの箱に結ぼうかなんて思ったんだけど 
 上手く出来なくってさ・・。

 ・・・・・ごめん。」

─ バカだなぁ カズシ・・馬鹿だなぁ・・・私・・・



ナホコは カズシの持つ銀色のリボンに  そっと手を伸ばす。

「あ、待って、こっちの手貸して。」



カズシはナホコの左手を取ると、
薬指にくるっと リボンを巻きつけて きゅっと蝶結びにした。

「この前の仕事先で、ナホさんに似合いそうなの見つけて・・
 こういうのって、内緒で用意した方がいいんだろうけどさ
 ・・オレ サイズとか全然知らないし

 ロマンチックとかも、あんまり よくわかんない ・・・

 ああ・・・・このリボンを ってのじゃなく
 ・・あ、でも 箱にリボンもかけてさ・・・

 ちゃんとクリスマスプレゼントは したいから・・・・・」



カズシの言葉がしどろもどろで なんだかおかしくって
でも 伝わる気持ちが 嬉しくって 
ものすごく嬉しくって

巻いたリボンの先がひらひら 小刻みに震えた。



カズシはナホコの指から 輪にしたままのリボンをそっと抜くと

「ええと・・・・だから あの ナントカクルーズは・・・」



「うん。仕事があるなら 少しの時間でもいいよ。
      イヴはカズシと一緒にいる。」

ほんとは 銀色のリボンの指輪でも 充分だった。
ホカホカ温かいのは ココアのせいだけじゃない。


  ☆


イブの夜も 結局 お互いに仕事で
やっと会えたのは 夜中近かった。

「ナホさんに見てほしいんだ」

カズシが飾った ファッションビルのエントランス。
吹き抜けの天井まで伸びだ 真っ白なクリスマスツリー。

閉店後の暗がりの中、ポォっと光って見える。




「ナホさんにスペシャルプレゼントだよ。」

カズシが電源をONにすると 
ミラーボールの光が キラキラ雪のように舞った。

ブルーのライトに照らされた ツリー。
飾りは ナホコの指に結んだのと同じ、銀色のリボン。

その下で カズシは リボンをかけた小箱を
照れくさそうに 差し出した。






「緊張解けたら 何か食べたくなっちゃった。ナホさん何食べたい?」

空調は切っててもビルの中は まだ暖かかった。
外に出たとたん、ビルの隙間から 冷たい風が吹き付ける。



そうだなぁ・・・・まだ 夢見ごこちの顔で ナホコは考える。



「うーん 美味しい屋台のおでん・・かな?
 すばらしいクリスマスのディスプレイに 乾杯!といきますか?」



カズシ 凄い、凄いよぉ!って 
いっぱい いっぱい 褒めたかった。

カズシと 一緒にいられて ほんとに 良かった
ほんとに 良かったよ・・って 告げたかった。

泣きそうな顔が 照れくさくって ナホコは先に走り出す。
カズシがあわてて 駆け足で追ってきた。



「・・それってさ、ロマンチックなの?」



「ロマンチックだよ。」

立ち止まって 振り向くと すぐ後ろにカズシが立っていた。



思ってたより がっちりした大きな身体。
背だってこんなに高かったんだ・・

ナホコは カズシの胸に コツンと頭をひっけて言う。



 ─ Merry X’mas!!

       だ   い   す   き ─

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「く」~クリスマスキャロル

8.png


「サンタさんって・・本物?」


店頭販売のケーキの箱の山の向こうから、可愛い声がした。
ひょっこり頭を覗かせたのは6~7歳位の女の子。

ニットの帽子は被っているものの、
パジャマのような服にキルティングの上着、
足元も何だか 寒そうだ。


トウコは どう答えたものか解らない。
愛想笑いを返しただけで、
用もないのに ケーキの箱を 並べ直したりしていた。

ぱらぱら来るお客の相手をしていても、
女の子は気にせず 話しかけてくる。




「いいな、ケーキ屋さん。私もケーキ屋さんになりたかったな。」


何も好きでサンタのなりして、クリスマスケーキ売ってるわけじゃない
・・トウコは思う。
アイツに24、25日って暇? って聞かれて、
変な期待をしたのが間違いの元。

しっかりバイトを押し付けられた。


クリスマスケーキ売りに、25過ぎたお姉さんねェ・・・
店長はトウコを見て言い、
まぁサンタらしくしてよ・・と ブカブカの衣装を手渡した。





女の子は 返事もしないトウコに向かって ニコニコ 話し続ける。

「あのね、私ツリー見に行くの。公園に大きな木があって、
すごく奇麗 なんだって。
きっと見に行こうねって約束したの。」

 ━その格好じゃ寒いんじゃない?
  お母さんとか どこにいるの? 風邪ひいちゃうよ。

以前のトウコなら絶対 しゃがんで、そう話しかけたはず。




女の子の服装・・色の白さ・・
思い出すのは、この間辞めてきた職場・・・病院。

小児病棟の子供たちも 大きくなったらなりたいものを色々言った。
○○屋さんが多かったな。
好きなものに囲まれる・・子供らしい発想・・。

いつからこんな風に なったんだろう。
忙しさにまぎれて、何を忘れてしまったんだろう・・。
こんなことするために、看護学校通ってたんだろうか・・・。





「じゃあ、もう行くね、サンタさん。」

女の子が手を振って 行ってしまう。
後姿が遠くなる。






トウコの心がざわめきだした。

「ゴメン、すぐ戻るから!!」

他のバイトの子に声をかけ、トウコは女の子の後を追った。




付けひげを取り、邪魔な帽子を外す。

あの子はまるで・・まるで・・そう小児病棟を抜け出してきた患者さん。
ううん、そうでなくても、あんな小さな子が一人、
こんな時間にウロウロしてたら大変だ。



サンタの服が目だって、酔っ払いが声をかける。

ボタンを外すのももどかしい。
上着を脱ぎながら早足になる。

私が小さいとき、なりたかったものは・・
・・なりたかったものは・・


息が白い。雪になりそうだ・・。
思い出しそうな何か、心に引っかかってる何か・・
久しぶりのこの町・・公園の向こうのあの病院、私知ってる。

ずっと若い頃・・看護実習に行ったところだ。





ジーンズの上からはいている ブカブカの 赤いズボンが
邪魔で走れない。
トウコは剥ぎ取るようにズボンを脱ぐ。



公園はもうすぐ
あの子はどこ?






角を曲がると、輝きが迫ってきた。
きらめく電飾。
光の渦。


あの時 窓の外、大きな木を見てた女の子に 
実習生の私は何を話したんだっけ。
何を見ようって、約束したんだっけ・・。





公園の大きな木は、目もくらみそうなクリスマスツリー
・・光の波がトウコに押し寄せてくる。

クリスマスキャロルが何処からか聞こえる。





 人ごみの中に
「やっと、一緒に見られたね。」
と微笑む 少女の姿を 

トウコは一瞬 見たような気がした。




    ★Merry X'mas★



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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

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