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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「探しもの」

森の中で、幼い私は何かを探しているの。
大きな木の根元に あるはずのものがない。
この木じゃ、なかったのかな
場所を間違えたのかしら。

それが酷く不安で 気になっていて
だけど 自分が探しているのが
なんだかわからない。

森はどんどん暗さを増し
木々はずんずん大きく太くなり
私は森に飲み込まれる。
そんな夢を繰り返し見る。


ナツキは深いため息をつき、その「探し物」の夢の話をした。
抱きしめようと手を伸ばしても、かたくなに身体を強張らせ
そんな風に慰めて欲しいわけじゃない、と言った。


大事にしてて失くしたものとかある?
そういうのが気になってるとかさ。

んとね・・
小さい頃のお気に入りは大きなうさぎのぬいぐるみ。
いつも一緒。出かける時も、眠るときも。お風呂にも連れて入った。
あれ・・いつから無くなったんだろう。
ナツキは眉をひそめ、爪を噛んだ。
何かを思い出そうとするときの彼女の癖だ。


ぬいぐるみのうさぎさんね、女の子だね、やっぱ。
うちって兄弟ヤローばっかじゃん、そういうのって全然なくってさ
たまに女兄弟のいる友達んち行くとさ、やたらぬいぐるみ触ったりした。
弟のことあんまり言わないけど、歳離れてるから あんまり関わりないのかな?

うん。・・・。
弟が生まれ、その世話でお母さんは忙しくなった。
以前はこまめに洗ったり干したり、繕ってくれたのに
もう、してくれないの。

そうだ、弟と友達が引っ張り合って、耳がちぎれ
ジュースをこぼされてシミができた。




泣きながらお母さんに訴えた。
きれいにしてよ。直してよ。

最初はなだめてくれたお母さんも
次第に不機嫌になり、
いつまでも聞き分けないこと言わないの!お姉ちゃんでしょ。
お母さんは私の手から うさぎを取り上げ
取り上げて・・どうしたんだっけ・・。

ナツキはまた爪を噛む。



取り上げ・・・捨てた。

びくりと身体を震わせると 宙に目を据えたままそう呟き
彼女は長い沈黙の後
静かに静かに泣き始めたのだった。


こども産むの怖い。
優しくできないかもしれないの。
私は弟に全然優しくできなかった。
こっそりつねったり叩いたりした。
家を出て、家族と顔を合わさずないで良くなってほっとしたの。
こんな私が家族をうまく作れるわけがない。

その日 僕は黙って彼女の手を握り続ける以外何もできなかった。


彼女の両親に電話をし、子供ができたことを報告した。
成人した弟が出、気弱そうな母親の声が「おめでとう」と「ありがとう」を言った。

気が早いかもしれないけれど、お祝いに贈りたいものがあるの。
いつかこんな日がきたら ずっと そうしたいと思ってた、
そう彼女の母親は言った。

数日後、宅急便で送られてきたのは うさぎのぬいぐるみ。
包みを開けたナツキは 「あっ」と言ったまま箱の中を凝視し、ゆっくりと手を伸ばすと 中からうさぎを抱き上げ 抱きしめ、頬ずりした。
─探していたのは このこ

「オレ全然覚えてないんだけど あの時はごめん。うさぎのぬいぐるみ、おふくろ同じのを探すのにそりゃ苦労してたよ」
ナツキの電話に 弟がそう言った。

「わたしこそ、いろいろごめん」
ナツキが言う。
「何?何の事?」
弟は笑っていたという。
電話の向こうからかすかに聞こえた声は、思ったよりずっと明るかった。


大きくなったおなかを庇うように横を向いて、ナツキがうさぎを抱いて眠っている。
あれから探し物の夢は見なくなったらしい。

出発のとき

大好きないくつかのblogでも
切ない春の旅立ちと別れのお話を見つけました。
これも ひとつのカタチです。発音は関西弁で・・。



IMG_000023.png




じゃあね。

うん。

元気でね。

うん。

引き止めなかったね。

うん。

待ってるとも言わないね。

うん。

試しにさ、言ってみたら?






遠距離恋愛なんて オレぜーったい無理。

きっと そばにいるちょっとタイプの子に
彼女と会えなくて寂しいねん、とか
なんかすれ違いなんや~
なんて言って
気ぃひいたりするねん。

相談なんやけどぉなんて 言って呼び出したりして

「そんな遠くの彼女なんて やめて、アタシじゃあかんの?」
なんて言われてな

めっちゃ暗く 重くなって
飲んでつぶれてな、
彼女に慰めてもろたりして そのうち
いい感じになったりしてな

でも、手紙には よう書けへんねん。

「早く会いたいね。」
なんて 書くねん。


で、自分の嘘に落ち込むねん。




あほ。
ほんまやわ、こんな あほといつまでも
付き合ってられへんわ。




じゃ 行くね。

一生の内で出会った 
一番正直なやつと結婚できるとしたら



間違いなく あんただよ。






みかん~「あけましておめでとう」

,新年第一弾です。
今年は行かなかったのですが うちの近くの神社の風景を少し写してみました。
あけましておめでとう・・の気持ちを込めて。
皆様今年も宜しくお願い致します。


orange.png



「あけましておめでとうございます。」

近隣の人しか来ない小さな神社。深夜0時。
ひんやり冷たいみかんを 次々手渡しながら 愛想笑い。

お神酒を振舞われて 少しテンションの上がった大人や 
寝ぼけ顔の小さな子どもたち。
夜中に友達と出歩けるのが 
嬉しくてしょうがないって感じの 若いコたち。


ため息でちゃう・・。
こんなつもりで 帰ってきたんじゃないのにな。

─ ごめん、チハルお願いね
大掃除中 腰を痛めた母の代役で 
町内会の手伝いをするハメになった。

のんびり田舎で寝正月・・のつもりで帰ってきた。
一緒に過ごす相手のいなくなったあの街から 少しだけ離れたかった。

少し 人の波が途絶えて チハルは やっと白い息を 長く吐く。


小さい頃は両親と一緒に 夜中、ここに初詣に来るのが楽しかった。
顔見知りのメンバーに年始の挨拶をして
町内会のおじさんにみかんを貰い
お参りして 焚き火で温まって おみくじを引いた。

お神酒をもらえる歳になったころには 
もう大晦日に親と こんな近所の神社に来ることもなくなっていた。



知ってる顔は年寄りばかり・・かと思ったが
昔のクラスメイトもちらほら見かける。

意外な同窓生カップル。
早くも子連れになってる子までいた。

軽い会釈くらいで やり過ごす。



「みかんの追加の箱、ここに置いておきますね~・・・あれ?」

いかにもこれからの町内会を担う若手・・って雰囲気の男の人が
ダンボールをドスンとおきながら チハルの顔を覗き込んだ。

「ヤマナカ・・チハルだよな、オマエ」

・・よりによって何でまたコイツと会うんだ・・チハルは目を逸らす。

中学のとき一番苦手だった男子。
チハルのことを「クソ真面目」「笑ったの見たことない」って言った。



「覚えてねぇかな オレ、オオシマ。」

「覚えてるよ・・タカコの彼だったもの、1ヶ月だけ。」
「何でそういうことから言うかなぁ~?オマエってホント・・」

─ ’ホント’に、どうなんだ?

親友のタカコは オオシマのチハルへの評価を噂で聞いて
チハル以上に 憤慨してくれた。
オオシマとのデートのときも
「チハルって そんなんじゃないよ。」と 言い続けてくれたらしい。

─ 結局1ヶ月で話が合わないって 別れちゃったんだっけ。


       ★


確かに男子としゃべるのは得意とは言えないけど 
友達とは毎日笑い転げてる。

授業中はいつも 教科書の余白に漫画描いて、
次に描くストーリーを想像して楽しんでいる。

何でわざわざアイツに「クソ真面目」だの
「笑わない女」だの言われなきゃなんないの?

教室で仲間と派手にふざけて遊んでるオオシマを横目で見ながら
いつも チハルは心で問いかけた。

「きっと オオシマはチハルを好きなんだよ、
  だから普通以上に チハルのこと気になるの。」
タカコはそう言ったけど
結局 オオシマが好きだったのは タカコの方だった。



あれから 自分のしてることが
誰かにどんな風に見えるのか気になるようになった。
意識しないように 気にしないように
すればするほど 何だか自分の行動がギクシャクする。

付き合った相手も少しはいたけれど 
相手の自分に対するイメージなどが いつも気になった。

明るい素敵な「彼女」になりたくて 少しばかりの無理を重ねていた。

でも どこかほんとの自分じゃない気がしてた。

気がついたら・・いつか別れ話になっていた。

  
     ★


「オマエってさ、まだ コツコツ密かに少女漫画とか描いてんの?」

お参りの人のピークが過ぎたのか 
少し手が空いてぼんやりと立っていたチハルに
後ろからオオシマの声が聞こえた。

「描いてないよ、もう。高校の間は少し描いたけど・・。
 描いてる時間もないし 今は普通に大学生してる・・・。

 何で そんなこと知ってるの?あ、タカコが?」

「なぁんだ、オマエ。何かつまんねーの。

 タカコからも聞いてたよ。オマエにはやりたい事があるってさ。
 だけど それより、文化祭で看板とか背景とか描いてたじゃん。
 一緒に大道具の係やった ユキオとかテルとか覚えてない?
 オマエのこと、むっちゃ上手いって騒いでたからさ。」

─ そんなことも あったっけ・・。

「嬉しそうな顔して 絵描くんだって、
 漫画家になりたいって その時照れくさそうに教えてくれたって
 ユキオもテルも ああ、シンタも言ってたなぁ。」

「そんなこと 私、誰かに言ってたんだ・・・。」

「誰かっにて・・・覚えてないってかぁ?
 ・・オマエって やっぱ、男子、興味なしだった?」

─ いや そんなことは なかったんだけど・・・

「へこむよなぁ・・あいつら オマエのファンクラブとか言ってたのに。」

「え?」

「ユキオが話しかけても ちっとも楽しそうにしてくれないし 
 テルが何気に遊びに誘っても 
 忙しいからって テキトーに断ったろ?」

それこそ、漫画のこと考えてただけだ。
休みの日には漫画 描きたかった。

でも ほんとはちょっと 自信がなかったのかもしれない
・・私といても 相手が楽しいかどうか・・。


「だから『クソ真面目』って・・『笑わない』って
  アイツらと喋ってるとき一回言ったきりだぜ、それでもさ。」

チハルは 初めてオオシマの顔を正面から見た。
男前ではないけど人気はあった。
しゃべりやすいキャラと皆は言った。

なのに 避けて避けてなるべく近寄らないようにしてた オオシマ。


「だからさ・・・ごめん・・って。 
     気にしてたんだろ、オマエ。」

 ─ ううん、全然 気になんかしてないよ。
・・いつもなら 意地でもそう言っていたと思う。


「・・・・うん。 ずっと 気にしてた。」

みかんをひとつ 両手で包み込み、感触を確かめているうちに
チハル自身でも驚くくらい 素直な本音が言えた。

「こっちも ずっと気にしてたんだぁ。
 はぁ、よかった やっと謝れた。
 ・・あ、おっめでとうございまーす。みかん どうぞ!」

初詣客がまた 少し増えてきた。

「でもさ、あのままで 結構人気あったから。
 それは ホントだから。
 ・・あ、みかんどうぞ!!ほら、オマエんとこ来てるぞ。」

小さい子が チハルの前で 手を差し出す。

「あけまして おめでとう!みかん ひとつどうぞ!」
チハルがみかんを手渡すと その子は受け取り
頬を上気させてにこっと笑った。

かわいい・・・と思った。
自然に相手に向かって 微笑めた。



少し 変われるかもしれない。 

少し 戻れるかもしれない。

もっと 人のこと 信じられるかもしれない。 

もっと 自分のこと大事にできるかもしれない。




「ありがとう。気にしててくれて。
 そうだ、 ・・・言ってなかったよね、
 
     『あけましておめでとう』。」


大事なものを手渡すように オオシマの上向きの手の平に

チハルはみかんをそっと置いた。



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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

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