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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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「め」~めだか

20051022001820.png



─ メダカーノ ガッコウハ・・ドーコ ニー アル・・

校外学習に行ってきたジュンペイが 
珍しく 大きい声で歌を 歌っている。

「何?それ」
「おかあさん 知らないの?『めだかの学校』」

「変な歌詞。そんな替え歌、流行ってるんだ?」
「今日できた。 先生が 歌ってたのを 皆で変えたの。」

横で漫画を読んでいた姉のユミは プッとふきだしてしまった。

「ヒダカが 歌ったの?それも メダカの歌~?。」

つまらないことでも 時々ツボにはまると 笑が止まらなくなる。
ユミは身体をよじって ケラケラ笑い続けた。

 
 
「ユミちゃん、先生を呼び捨てにしないの。」

ユミたち高学年の子が 2年の担任の日高先生を
「メダカ」と呼んでバカにしているのは 
母親のサエコも知っている。

名前も似てるし おどおどと周りを見ているときの目が 
サカナみたいだという。

ジュンペイたちの前では 言わないように、と 
サエコは日ごろからきつくユミに言っていた。





─ 子どもたちと 一緒に 歌なんて 歌うんだ・・・

サエコだって聞いた瞬間 意外だと思った。

2年生になって、息子の担任が この男性教師だと判った時 
サエコも実は、酷くがっかりしたのだ。


子どもたちと 必要最小限にしか付き合う気がなさそうな先生。
クレームが来ない程度に 日々をこなすことだけに
心を砕いているような先生。

前任校では 学級崩壊させて担任を変わらされそうになったとか
しょっちゅう具合が悪くなって休むから 勉強が遅れるとか
─ 評判は 最悪だった。



何よりも、子ども達が 
授業が単調で面白くない、クラスで楽しいことが何もない
と言い出したのが 悩みの種だった。 





「どこかに メダカ いたの?」
ジュンペイに サエコが尋ねると

「ううん、川は行ったけど、魚はいなかった。
 先生が 一人で歌ってた。何の歌?って聞いたらね・・。」


遠慮のかけらも無いユミは 足をバタつかせて 笑い、
「メ・ ダ ・カ・の学校~!!」。






先生のあだ名を 知らないはずはないと 思うのに
ジュンペイは 特に笑いもせず 言った。

「この歌が 好きで、
 子どもの頃から この歌 歌っては、
 先生になりたいなぁ・・って 思ってたんだって
       ・・日高先生 そう言ってたよ。」

「ふうぅん、そうなんだ。他に 色々教えてくれた?」
 サエコが聞く。

「ううん、それだけ。マサキくんが すぐに替え歌にした。
 それから ヨシダさんが 
 センセー、めだかなんか全然いないじゃん、って言った。」


「メダカーのガッコウはー ドコにーも ナイ」


先生がそのフレーズしか もともと歌う気がなかったのか、
子どもに邪魔されて 歌えなくなったのか
その辺りは 判らない。

ジュンペイたちが作った替え歌は延々 同じメロディーで 続く。




    *  *


「あれじゃぁ 子どもも やる気でないよねぇ。」
連絡網のついでに出るのは 
日高先生のやり方に対する不満の声ばかりだ。

「1年生の時のの先生は皆 子どものこと褒めまくってたのに
 花丸もないし 可愛い「見ました」のハンコもない、
 やる気がでるような コメントも全然つけてくれないもの・・
 ほんとに提出物 見てるのかって感じよね。」

「この頃 どうせ見てないからって 
問題飛ばして解いたりズルする子も いるらしいよ。」



ふうぅ・・とため息ついて 受話器を置く。

サエコには 教師になった友達が幾人かいる。
彼女たちと 話すと いつも 
自分が子どもにしつけるべきことを 
教師の責任に転嫁して文句を言ってくる
そんな「親」のことを よく聞かされた。

いつも そんな親にはなりたくない・・と思ったものだ。

けれど 自分の子どもの貴重な1年間が 
担任の先生に大きく左右される・・とも思う。
他にもたくさん先生がいて いい先生もいっぱいいるのに・・
サエコだって フクザツだ。


    *



─ おかあさん、あたし、変な夢 見ちゃったよ。

ユミが まだ 寝ぼけた顔で 言ったのは 
ジュンペイの校外学習の日から数日後のことだった。

「あたしが川にいるの。
 で、男の子が一人いて 川の中 覗き込んでるの。
 男の子は 色白で ちょっとおとなしい感じかな。

 一瞬 これって ジュンペイかな と思ったんだけど 違うんだ。」


小さいときからユミは 時々 夢の話をする。
ストーリー性があったりして面白いから 
サエコは結構楽しみにしていた。


 「川の中 男の子が指差して、『ほら 見て』って言うの。
  小さな魚が群れになって 泳いでた。

 『めだかだよ』
 『ふーん これが めだかなんだ。』
  
  夢の中の めだかは キラキラしてて すごく綺麗な魚だったの。

 『ボク 先生になりたいんだ。 でも 無理だよね。』
  なんて その子が言うから
 『そんなこと 判らないよ。 すごくなりたいと思うんなら なれるよ。』
  って あたし 答えた。

  
  あたしは いつの間にか 相手がジュンペイのように思いながら
  必死で言うの。

  『アンタはいつでも そうやって すぐに あきらめるんだ。
   なれるよ。絶対 なれるから。 なりたいものに なれるから。』

  夢の中で だんだん哀しくなってきて 
  あたし わんわん 泣いていた。

  起きたときも そのまま 何だか哀しかったの。

  変だよね。これって日高の話がアレンジされて 
  あたしの夢に なっちゃってるんだよね。」


サエコも 心の中で 日高少年を イメージしようとした。
けれど 頭の中の輪郭はぼんやりとして はっきりした顔にならず
ゆらゆらと ジュンペイの顔になったりした。

─ ジュンペイは大人しいけど 日高先生とは 違うわ。


サエコは 頭を振って ユミに笑って見せた。
ユミはユミで 進路のことなど 気になってるのかもしれない。







              * 



唐突に そのお手紙は渡された。

「担任の日高は 療養のため、本年度いっぱい お休みを頂きます。
 なお、後任につきましては・・・」

 校長の名で出された いつもの連絡事項の「手紙」だった。



親たちが 先生に対する苦情を 学校側に言いに行ったとしても
担任の交代なんて 簡単ではないと思っていた。

何度も会合があったり 校長を交えて話し合ったり
終いには 親同士も意見が分かれたり 
ぐちゃぐちゃになることは サエコも覚悟してたのに

なんとも あっけない 幕引きだった。




ジュンペイは 手紙をサエコに渡しながら 
「先生 病気なんだって。」
とだけ 言った。

子ども達に 残す言葉も これといってなかったらしい。

「職員室の掃除してたら メ・・日高先生が 荷物片付けてたよ。」
突然のことで ユミも戸惑った顔をしていた。


─ メダカーノ ガッコウハー

ジュンペイが ランドセルを片付けながら ぼそぼそ歌っている。

「川の中~、だよ。その続き。」
ユミが ジュンペイに教える。

「ユミが小さい頃は お手手つないで散歩しながら 
           よく 童謡とか歌ったっけ・・」
サエコが 懐かしそうに 言うと

「ズルいー。おねえちゃんばっかり。」
ジュンペイが ぷぅっと膨れる。

ユミが ふざけて ジュンペイの手を取って
「今からでも してあげるよねっ。おかあさん。」

恥ずかしがるジュンペイを挟んで ユミと一緒に サエコは歌った。





メダカを見つめていた 気弱な少年のことを想像して 

サエコは 少し 胸が痛くなる。



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「は」~母 (陽だまりの部屋)

俳句の屁散人さんがHPの「今日の一句」を「雲のあしあと」という本にまとめられました。
日々 感じたこと、考えたことを綴った 短い文章(詩)と一句、
そこに 懐かしさや あたたかさが いっぱいつまっています。
ご了承頂いて、その中の 一編から イメージを頂いて stotyを作りました。
(内容は すっかり フィクションになっています。
     登場人物は 屁散人さんとは 関係ありません) 
 

mamegiku.png



電話の 姉のナミエの声は 
ひさしぶりに おだやかだった。

─ とにかく一度 お線香くらいあげに 帰ってきなさいよ。
 大丈夫、もう 説教したり説得したりする気も ないからさ。





 田舎に残って 父母と同居し 
 その条件で結婚相手を探した 姉のナミエには
 色んなことで 迷惑をかけた。

 語学が勉強したいとか 
 適当な理由をつけて 家を出た時 
 父親は カンカンに怒った。

 けれど母親は 
 姉夫婦が 小遣いとして 月々くれるお金を
 こっそりためて ユキオに仕送りし続けてくれた。

 小さな畑でできた野菜と一緒に 
 それを 送っていたことを
 後で知ったナミエは 
 当然だが 気を悪くした。




一度も帰らないユキオのために
そのまま おいておくよりも
小学生になった息子のショウタに 
部屋を 空けてやって欲しいと ナミエが言ったとき

母だけが 頑として譲らなかったという。



─ 好きにしなよ、どうせ 帰らねぇから。

部屋にあるものは全部 捨ててくれたって構わない。

ナミエの電話にそう言い放って
ユキオは連絡を絶った。



父親が 亡くなったときも 
今更 長男ですと のこのこ出ていけないと思ったので
葬式にも出なかった。



そして数年の後 母親も 
あっけない程静かに 亡くなった。

電話でナミエと話しているうち またケンカ腰になり
そのまま葬式にも出ず 
残されたもの一切いらないと放棄した。




どうせ 帰っても 居場所がないんだ。

ユキオは そう思っていた。







「お母さんの部屋よ。」

柔らかい日の当たる 小さな部屋だ。
陽だまりの畳に 母が座って 
今にも「おかえり」と 声をかけてきそうだった。



「入りなさいよ。」

─ 今更 何を 見せたいんだ。
ふてくされた顔で 姉に続く。

一歩踏み入れて ユキオは言葉を失った。
驚いたことに、奥の壁際の一隅が 
そのまま「ユキオの部屋」だったのだ。



懐かしい勉強机 本棚 ベッドに ギター。

ポスターや 写真の類は さすがに壁にはなかったけれど
きれいに まとめて ベッドの上に置かれている。
母がベッドを使っていたわけではないことは すぐに解かった。



「私が 使うんだ って 
 母さん、ひとりで全部 運びこんだのよ。」

身体の小さな母が 背中を丸めながら 
ひとりで この勉強机を運ぶ姿を ユキオは想像した。


「ばかなものよね。母親なんて。」





ちょうど 開いたドアから、ナミエの息子のショウタが覗く。

「あれ、おじさん 久しぶり。 
  なんだ、生きてたんだ。」

ショウタは ニッと笑って、そのまま通り過ぎようとする。




─ カアサンには 内緒なんだけど・・・
  家を出て 大学行きたいんだ。
  就職も できたらそのまま、そっちでしたい・・・。


ショウタが 電話でユキオに相談してきたのは つい最近のことだ。





「子どもなんて、いつの間にか こんなに大きくなってさ
 結局 ふらふら どっかへ 行っちゃうんだ。」


自分より 背の高い息子の うしろ頭をパコンとたたいて

ナミエは ため息をついて 少し笑った。



「そ」~ソーイングボックス(ちょっと昔の話)

20050621182957.png

リツ子は、こどもの物を買うとき、
「皆と同じ」のを買うのが嫌いだ。


学校で買い揃える教材でも、「おうちにあるもの」でも
「お下がり」でもいいといいながら、
一括購入の申し込み袋が配られる。


「質の割りには、特別安いっていうならまだ考えるけど・・」
リツ子は エリに言った。

「きっと おんなじくらいの値段で、もっといいのがあるよ。
 それとも、綺麗な箱を探して、中身を買い揃える?」



日ごろから あまり意見を言わない 娘のエリを連れ、
電車に乗って、よそ行きのお洋服で デパートに出かけた。

もちろん 嫌だというものを無理やり買ったり、
したくない という 習い事を させたりする気はない。

はっきりしない娘の 表情の変化などは、
ちゃんと気配りしてやってる ・・と思う。



近所の小さなスーパーや 市場の洋裁小物店も 下見に行った。

いいものを 意外と安く、上手に買うのが リツ子の自慢だった。

デパートをふたつ 見て回って、地下街も行って
・・ そういう買い物は、ちっとも苦にならない。

案外、思ったものが無く、
エリが 疲れた 泣きそうな顔で 付いて来るので、
そろそろ ここで決めよう と 
デパートの 洋裁小物売り場に行った。

   
あったのは 水色の四角いプラスチックケースで、
ふたには クラッシックカーの絵が ついている。

上の娘なら気にいるかも知れないが、
エリのセンスではないのは 確かだ。
店員に聞いても、他の色も柄も ないという。


「しゃれてるじゃない?」

青が男の色だとか、車の柄はどうだとか、
リツ子は そういうことにこだわるのは 好きじゃない。
エリさえ嫌じゃなければ いいんじゃないか・・。


「これでも いい。」
疲れきった顔のエリは、「嫌」とは言わなかった。

気に入ってるわけじゃないことは 解っているものの、
折角ここまで来て、探し回ってやったのに・・と思うと 
浮かない顔のエリには 正直腹もたつ。

強引に買ってしまった後悔も 少しは・・・ある。



ちょうど文具売り場で、
エリの好きそうな サクランボのシールを見つけて、買ってやった。

「これ、貼ったら 可愛くなるよ」




家に帰ってすぐ、エリは不器用な手つきで、
ソーイングボックスのふたの、
クラッシックカーの絵柄の周りに シールを貼っている。

思った位置に貼れなくて はがし、また貼って
・・としているうちに 
新品のソーイングボックスが シール跡で汚くなっていく。

そこを ものさしや はさみで コリコリとこすっている・・。

案の定 傷がつく・・。
          


黙って見守るっていうのも、疲れるものだ・・と、リツ子は思う。






家庭科の授業で、初めて エリが 
学校に ソーイングボックスを持って行った。

帰って来たとき、リツ子が
「他にも お下がりの子とか、別のを買った子 いたでしょ?」
と聞くと、

うつむいたままのエリは

「○○君のと一緒だった・・」
と 肩を落として 部屋に入ってしまった。



後から聞いた話だが、その年の 一括購入の品は、
ビニール製で マジックテープ留めの ふたがついていた。

針やはさみで遊んだり、乱雑に扱う子も多く、
すぐにビニールを破って 使えなくした子が 何人もいたそうだ。



エリがその後、どれくらい
そのソーイングセットを大事にしてくれたのか、

リツ子は聞けないでいる

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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