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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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「ほ」~ほたる

重松清さんの「きよしこ」という小説に 大阪弁のおじさんが出てきます。
おしゃべりが苦手で 友達がなかなかできない少年の、引越し先での 初めての友達です。
 
「ほたる」の題で 私も 子どもと孤独なおじさんのふれあいを描いてみました。
関西弁使って 一度書いてみたかったんだ。 




おっちゃんか?
おっちゃんの名前なぁ・・

そうやなぁ 
何でもええけどなぁ・・。



 
ちっさい兄ちゃん、ホタル 知ってるか?

おっちゃんが 生まれ育った 田舎なぁ
近所の川に ホタル いっぱい おったんやで。

夜になって 家族で 外 出て
ホタル見るとな
あっちにぴかり こっちに ちらり

それは きれいやってんで。


手のなかに そっと入れるとな
ふわっと 明るく光って

その光が ほっこり やさしゅうて

大事に だいじに 
また 手ぇ 開いてな
飛ばしてやるんや。

元気で 飛んで行き、ってな。



おっちゃんな 田舎出て 働いた.
家族のために それは 一所懸命 働いたんやで。

やっとのことで マンション 買うたんや。
ごっつい ぴかぴかの マンションや。


まっさらな 白い壁紙が まぶしゅうて
それが 誇らしゅうて

ベランダ出て タバコ吸っても
幸せ やった。

あっちに ぴかり  こっちに ちらり
タバコの火ぃ 見えるんや。

ああ、あそこの ダンナさんも
そっちのダンナさんも

部屋 汚さんといて とか、
空気悪うなるから とか言われて 
ベランダ 出て 一服やってるんやろな 

そう 思った。



でも おっちゃんは 幸せやったんや。

ホタルみたいに ぴかり ちかり
タバコの火ぃ 見える マンションのベランダが
家族 守る 大切な 居場所やと 思うてた。




おっちゃんか 
おっちゃん 誰でもなくなった。
だいじなもの いっぱい 無くしてしもた。



ちっさい兄ちゃん 
この タバコは あかん。

あかんよ。返してき。


禁煙してるはずの おとうちゃんが 
こっそり買うてたから

おかあちゃんが それを怒って 
ゴミ箱捨ててたからって

それ 拾って来て おっちゃんに 
くれたら あかん。

それは あかん。


気持ちだけ ありがとうって
貰っとく。
おっちゃん 落ちてるタバコ 探してたんやもんな。


ちっさい兄ちゃんは ええ子やな。
ほんま ええ子や。



おっちゃんな
田舎のホタル 見とうなった。

ちっさい兄ちゃんぐらいの時
毎日 走り回ってた道が 見とうなった。

すっかり 変わってても
誰も おっちゃんのこと 知らへんよう なっとっても

もしかしたら 川もすっかり 変わっとって
ホタル おらんかもしれんけど

それでも おっちゃんの 
帰るところやもん。
始まりのところ やもん。


ちっさい兄ちゃん 
ありがとうな 

ほら もう 家に 帰り。
みんなが 心配する。
元気で また 会えたらええな。


おっちゃんか
そうやな・・
ホタルのおっちゃん って 覚えといて。




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「ふ」~風船 飛んだ




ひまわりの種と小さな手紙をつけた 
色とりどりの 風船が
1クラスの人数分 青い空に いっせいに飛んだ。



どうか 風に流されず 
まっすぐ上へ昇っていって・・

祈るような気持ちで 風船を見続けた。



本当の気持ちなんて押し隠して
人に合わせて ふらふら流されてるだけの

自分のことを どう書き表していいか解らなくって

自己紹介の手紙の 文字を
書いては 消し 書いては 消した。

結局 小学校の住所、自分の名前と学年だけ 
なんとか書いて ひまわりの種に添えた。



学校にその葉書がついたのは 卒業も間近い 冬の終わりだった。

「 あなたが 風船につけて 
 送ってくださった ひまわりの種 
 受け取っています。

 もうすぐ中学生、
 ひまわりで言うと まだつぼみをつける前
 空に向かって ぐんぐん 伸びている時期でしょうね。

 時期が来ましたら 
 畑の日当たりの良いところに 
 植えたいと思っています。」






ほとんど同じメンバーで 
そのまま中学生になって 2年半が過ぎたけれど
ひまわりの種をつけて 飛ばした風船の話は 
それからほとんど出ることもなかった。

他に手紙が届いた子もいたが 会いに行ったという話もない。

気になってはいたが いつか 忘れていた。
忘れた・・と思うことにした。



「みんな」が行く高校を 
友達と見学に行くことにした日、
電車の路線図に その駅名を 見つけた。
差出人の「おっちゃん」の 住む町の駅だ。


「マユ どうしたのぉ・・行くよぉ」

友達の声が 遠く 聞こえた。
初めて 「みんな」の声に逆らって
反対向きの その駅まで 切符を買った。







丈の高い ひまわりが 
畑の一角に たくさん並んでいる。

立ち止まって 見ていたら 
花の間から 年配の男の人が 出てきた。 

腰は少し曲がっているけれど
こっちを まっすぐに見て ゆっくり話し、
畑仕事で日焼けした顔に 白い歯を見せて 
大きく笑う。

「今度は 風船に女の子がついて来たのかと思った 」



何かのキャンペーンとかで 駅前で配っていた風船を
何となく 受け取ったまま 持っていたことに 気づいた。





 

知らない人に こんなに自分のことを 話したことがない。

一言でなんか言えない 自分のこと、
どうしても好きになれない自分のこと・・。
興味もないアイドルの話に 楽しそうに うなずき、
嫌いでもない子を 「みんながするから」 避けたりして
中学もまた そのまま 終わろうしていること。

風船につけられなかった 自己紹介のかわりに
一言で書く事ができなかった 手紙のかわりに
言葉が 溢れるように出てきた。



毎年 ひまわりを見るたびに こうやって 心の中で 
この人に話しかけていたのかもしれない。





「おっちゃん」に頼んで 
種が出来たところから 少し分けてもらって 包みに入れ
持っていた風船に つけた。

手を離すと風船は ふわりと風に流されて行った。



─ 今度、風船をたくさん持って 来ます。
  色んな想いを いっぱい託して
  ここから 飛ばしてもいいですか?



「おっちゃん」に また来る約束をして 帰りの電車に乗った。

「みんな」が行く高校以外に 少し気になっていた別の高校も
今度 一人で 見に行ってみよう。




電車の窓の外 遠く 
風船が 一つ 
風に ゆっくり流されながら
それでも 高く 高く 
昇って行った。


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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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