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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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Merry X'masを そこで 言う

Texpo 2周年記念の800字バトルに参加しました。
自分の中で「黒猫と日本人形」というテーマが先にあって、
そこにこのバトルのお題である「展望台」「手袋」「クリスマス」を
追加で当てはめて、お話ができました。
久し振りのお話作り。
わくわくして楽しくて 出来より何より 
私やっぱり この時間が好きだ・・
そう感じた今回の参加でした。何だか感謝の「創作」でした




トキ婆が起きない。

お腹すいたぞ、トキ婆、ぺろり舐めた頬は 酷く冷たかった。
布団に潜り込んで寄り添ってみたが トキ婆はますます冷たくなっていく。
箪笥の上、「ゆき」は いつも通り座っている。
朝の光を受けて、ゆきの眼尻がキラリと光ったような気がした。

電話だぞ、にゃあにゃあ鳴いたら隣の人がやっと来た。
それから後は、知らない人間がばたばた行き来して 
トキ婆は寝たまま連れて行かれた。
それっきり。


「クリスマスイヴに遺品整理とはな」
今日はトキ婆の息子の誠と嫁が来た。
「そんなに物、多くないね。お義母さん綺麗に片付けてる」
「倹約家だったしな。あ、これ」
くすんだ銀色のメダルを誠が缶の中から摘み上げる。
「子供の頃、山の展望台で買ったヤツだ」
何てことない所なんだけど、家族でよく行ったっけ・・
そんな話をしながら 二人は家中の物を次々仕分けしていく。
トキ婆が家の中からどんどん消える。

「これって・・お人形の手袋?」
ゆきや他の飾り物を箪笥から下した後、嫁が赤い毛糸で編んだ物を見つけた。
最近までトキ婆が編んでたヤツだ。
誠は苦い物でも食ったような顔をして黙り込んだ後 
「その日本人形のかな。母さん『ゆき』って呼んでて・・」
ぽそりと言った。

「亡くなったお姉さんの名前?」
「小物や飾り作ったり・・話しかけたりもしてた」
「そんな大事なお人形なら・・どうする?捨てるって訳にも・・」
「じゃ、持って帰る?」
「え、それも・・」
人形供養がどうとか言ってるのを聞きながら、そろり起き上ったら
「きゃ、黒猫」
嫁が初めてオレに気がついた。


「その運び方、何とかならない?着物 汚れちゃうじゃない・・」
「手袋、ちゃんと嵌めて欲しいな。脱げそうよ」
「るさい、人形のくせに。歩けないなら黙ってな」

「どこ行くの?」
「展望台」
「『母さん』の思い出の場所?」
そう、オレの親が拾われた場所でもある。

辿り着いたら、コイツとトキ婆とトキ婆の大事にしてた全ての思い出に
「メリークリスマス」を言う。
その後はまだ考えていない。

赤い手袋をした日本人形をくわえて歩く、奇妙な黒猫を見かけたら
どうぞ そっとしておいて欲しい。
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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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