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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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風船の行方   (原題;言葉がカタカナだった頃)

800字バトル お題 「乗り物、男の子、携帯」
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遊園地の乗り物の長い列。やっと順が来たと思った時目の前でチェーンが掛けられた。
口を尖らす美佐を、順番が来るまで宥めてくれた係の女性は、私を見て一瞬驚いた顔をした後 
はにかんだ笑顔で小さく唇を動かした。
「奈央?」

 *

ベンチで待っていると 瞳は、遊園地のキャラクターグッズを沢山持って来てくれた。
「なんだ姪っ子なんだ。こんな大きな子がいるのかと思った」
グッズの小袋を開け、何かと美佐の世話を焼きながら 瞳は眩しそうに笑った。
ピアスに茶髪だった中学の頃より、ずっと素顔に近い。
赤ちゃんができて早くに結婚したと噂に聞いた。
まだお母さんと一緒にいたい年頃なんじゃないかな…優しく美佐に話しかける瞳の様子を見ながら
思っていると 彼女が先に切り出した。
「最初の子、ダメだったんだ。それから、なかなかできなくてね」
言葉に詰まる。
着ぐるみに向かって走り出す美佐の背中を目で追い、瞳が続ける。
「先生に酷いこと言ったね。奈央だけが本気で怒った」
「何度も辛い思いをして産んだ子だって 母から私自身の話 聞かされてたからね。
私の存在だってなかったかもしれないって」

リューザンしちまえ。オマエの子供なんて生まれる方がカワイソウなんだよっ。

あの時の荒んだ瞳の様子と、先生の悲しい目は忘れられない。

「言葉の持つ重さなんて 全然解ってなかった」
瞳がぽそり呟いた。
「どうしてるのかな」
手から離れて飛んでいく風船を指差し、情けない顔をする美佐に手を振りながら 私が言うと

「見る?結構イケメン」
瞳が携帯を開いた。意味が解らない。

携帯の画面に瞳と一緒に写っていたのは 見覚えのある女性と彼女によく似た男の子。
目を疑った。
「先生と、あの時の?」
「他にもいっぱいあるんだよ」
画像を探す瞳の照れた横顔を見て やっと事情が呑み込めた。

「いつでもメールしておいで」  アドレスを教えてくれた先生。
先生はずっと瞳の「先生」だったんだね。

爽やかな風が通り抜け
新しい風船を持った美佐が いっぱいの笑顔で駆けてくる。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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