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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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こもりうた(ひまわりの庭Ⅰ)

Texpo クイックバトル参加 お題は「ソファー、マシンガン、缶切」でした




義人がいる。
何で一緒に暮らしているんだか解らないけど
気が付いたら うちに住みこんでいる。

母が亡くなって 一人でぼんやりしていたかったのに
何故だか 葬式の後 そのままついてきて
いつまでも帰らないで アタシの実家に居座っている。

一応 付き合ってはいたけど
同棲するとか そんな気は全くなかったし、
長く付き合うとかそんな風になるとも 思っていなかった。

何かすっとんきょうで トンチンカンで やっぱり変な男だ。


今日は ぼんやり TV観ている私のそばで
床を磨いていたかと思ったら、今度は庭の草を抜いたりしている。
庭の隅っこで 何やらやっていると思ったら 勝手に花の種を播いていたらしい。
「何が咲くかは お楽しみ」だそうだ。


親族でもないくせに 何と言って取ったんだか
会社も結構長く休んでいる。



─ユカコちゃんだっけ、この間会ったのりさんの友達さ
あの娘の喋り方ってミサイルみたいだよな。
あんな娘といつもいたら たまんないよな、オレなんか返事のスキもない。


ひとりでうんうん頷きながら 解った顔で喋りつづける義人の声は
ソファに横になって うとうとしてても やっぱり聞こえてて

そこ ミサイルじゃなくマシンガンだろうが と思う。
思うけどもうどうでもよくて 突っ込む気にもならない。


─缶切りって ほらキコキコするやつじゃなく
ほら ぐっと挟み込んで 回していくのあるじゃん
確かに 便利かもしれないけどさ、
いや 基本キコキコするのが良いよな、 クルクルなんて邪道だ。

今度は何でだか 缶切りについて 熱く語っている。

残念 うちのキッチンの引き出しにはそれがあるんだよ。母も私も 気に入ってそれ使ってきたんだよ。



眠くて眠くてたまらないから
今度はワインの栓ぬきについて語る義人を 放ったまま
アタシは 目をつぶる。

このところ ちゃんと眠れていない。
いや 眠っているんだか いないんだか 自分でもよく解らないのだ。
ただ だるくて めんどくさくて ぼんやりしたいだけで。

なのに 義人は ずっと どうでもいいことを
傍でちまちまやりながら しゃべり続けているのだ。
あの日やってきてから ずっと、そう、ずっとだ。




うとうとしながらも なんとなく義人が こちらを観ているのが解ったから
背中を向けた。

─急がなくていいよ。
元気出るまで のりさんの傍にいるよ。

頼んでもないのに、義人がそんなことを言っている。



眠りが足りて もう少し元気になったら 
そうだ、 ユカコを呼んで 二人でガンガン マシンガントークして
くるくる回す邪道な缶切りで 母が大事に仕舞い込んでいたはずの 頂き物の缶詰開けて
力入れずに開けられる 便利でおしゃれな栓抜き使って ワインを開け
義人があくびしてすぐ寝てしまうような 盛り上がりのないだらだらした映画を観て 過ごすのだ。


ここはアタシの家だ。アタシと母が大事にしてきた家だ。
親戚のいいなりになって 手放したりしない。

ここには 今アタシと義人がいる。
ちょっと 心地の良い・・・・そんな家だ。

なんだか急に そんな気持ちが言葉になって すうっと 胸の中が楽になった。



やっと 深い眠りにつけそうな気がする。

遠ざかる意識の向うで 調子っぱずれで間延びした
義人の子守り歌が聞こえる。 


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信号待ちの間に

Texpoのバトル参加作品。お題は「カーテン、携帯電話、信号」でした





「もしもし 由香子? あたし。うん 今 外」
車の音聞こえるけど・・と携帯から由香子の声がした。
とたん 引きつっていた頬が緩んだ。

泣いてるの?どした?由香子がいきなり聞いてきた。
「まさか ばっかじゃないの。泣かないよ」

いきなり掛けて来て 何でその言い方よ、流れが見えないよ、何怒ってる? 
由香子が聞く。

相変わらず察しのいい友人だ。

「鼻声?ああ これは 花粉症。そう、花粉症」
あたしは答えながら 鼻をすする。アレルギーがないのが 自慢だったくせに。
それでも 由香子にはバレバレで ふうん、なんて言いながら 上手く先を促すから
ついつい こちらの事情なんかを 吐き出してしまう。いつものことだ。

「カーテンなんて 何だっていいよ、好きなんの選んできたら なんて言うんだよ。
信じらんない。新居だよ 新婚の 初めての 二人の部屋なんだよ。」
黙って聞く由香子にあたしは まくしたてる。

何色にしよう どんな家具にしようって 一緒に迷うのが楽しいんじゃないの?
もう アウトだよ。こんなに 夢破ってくれて。
こんなとこで躓いたら これからうまくいかないこといっぱいあるよ
考え直そうかな 結婚。まだ間に合うよね。


あらら、とか へええとか そうだね、とか
由香子は合間に控えめな相槌を打つ。ときどき あんたらしいわって くすくす笑う。
由香子の笑った時の顔が浮かぶ。


どこが好きだったんだっけ?  今さらのように 由香子が聞く。
これって いつも あたしがヤツと喧嘩した時に 彼女が聞くことのひとつだ。
そして あたしもいつも 律儀に答えを探すのだ。

「どこだか もうわかんなくなったよ。優しいっていうのは こんなのとは違うよ。
好きにしていい 任せる 君の趣味でいいなんて 優しくないよ 全然優しくなんかない。」

付き合い始めたきっかけって 何だったっけって 由香子がとぼけて聞いてくる。
知ってるくせにね。ずっと一緒にいたんだ。あたしたち。みんな。

「やきそばだったよねって。また それ言うの?」あたしは 言う。何度も何度も話した思い出話。

学祭だったよね。よく覚えてるよね。
あの時は楽しかったよね。確かに楽しかった。
若かったねぇ。うん、若かった。
汗でTシャツ濡らしてさ。
頭と首に巻いたタオル 見るに見かねて取り替えてあげた。世話女房みたいにね。

料理得意な人なのかって 勘違いしたけど それしか作れなかったじゃない。
でもさ、よく皆で 下宿に乗り込んで 無理やりやきそばパーティーしたよね。
雑魚寝して 彼がいつも風邪引いた。
起きたらいつも あたしの上に毛布が掛かってた。

そうやって 由香子はあたしに色んなことを話させる。
鼻声が酷くなってることには触れないで。


「信号待ちって なんかさ、待ってたら長いよね。」
あたしが言う。電話の向こうで また由香子が笑う。
思わない? あれ そう?

「とおりゃんせ」の音って鳴らなくなったね。いつの間にか。
変だったよね。音程が何だか 間抜けなの。

怖いながらもとおりゃんせ
なんてさぁ。 どんだけ 恐ろしいんだよ。横断歩道。
あれ、こんな話って 前もしたっけ。

で、どうすんの?由香子が聞く。
信号が青に変わり 周りの人が動き出す。前へ。

「行くんでしょ?今から 彼の部屋。」

うーん、と 考える。
「由香子と話してたら 何だかスッキリした」
ありがとね。ごめんね。いっつも。今度おごるよ。

で? ともう一度由香子が聞く。
答えはもう 解ってるんだよね?由香子にはきっと。


「やきそば作って待っててくれたら ちょっとだけ 許すかも。」
由香子のくすくす笑いの余韻を感じながらもうすこし歩いて 
横断歩道渡りきったら 電話を切ろう。


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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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