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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

[こ」~こだわり 又は 「こんなもの」

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「サイアク~!」

ふくれっ面の マユたちが、入れ違いに職員室から出てきた。
タエコが去年、担任した生徒達だ。

「どうしたの?」
「センセ、見て、これ。  
ヤマモトが取り上げて、
もう持って来ませんって謝るまで、返してくれないんだよ。」

マユたちは、手に持った カラフルで色々な形をした
鉛筆や消しゴムを、タエコに見せて言う。

「そうねぇ、
4組では 持って来ちゃいけないことに 決まったんでしょ。
守らなきゃね。
それから、先生に呼び捨ては良くないな。」

タエコは、努めて冷静に、返事する。


 ─可愛い消しゴム
タエコには、ずっと憧れだった。

タエコの親は厳しくて、着る物も、持ち物も、実用一点張り。
小学校高学年の頃に 出回りだした
キャラクター文具とか、ファンシー小物なんていうのには
全く価値を感じない人たちだった。

欲しい・・という前に、親の反応は予測できて、 
タエコにはとても 言い出せなかった。


席替えで、好きな子が隣の席に来た時は、
「消しゴム貸して」と言われたら、どうしよう・・・
いつもドキドキした。
一度 言われた時なんかは 
自分も忘れたフリをしてでも 貸さなかった。

タエコの消しゴムは、製図用の特大で、
古ぼけても まだまだしっかり使える。

早くなくならないかなぁ・・
親に内緒で、机の上や下敷きを 意味もなくゴシゴシ消した。



「アイツら、文句言ってたでしょ。」
 ヤマモト先生がタエコに声をかけた。

「見てくださいよ。一日でこれだもんなぁ。」
ヤマモト先生は自分のデスクの引き出しを開けて、タエコに見せる。

メモ帳、鉛筆、消しゴム・・
様々な形と色の文房具がいっぱい入った引き出し・・・。

タエコが返事をせずにいると、ヤマモト先生は 勢い付いて続ける。

「こんなもの持ってて、勉強が出来るわけないですよね。
 オモチャですよ。全く。
 こんなの欲しがる子供も子供だけど、
    買い与える親の気持ちも解らんなぁ。」






家に帰ったら、タエコには お気に入りの引き出しがある。
自分で働いて、物を買えるようになって、
やっと 欲しいものを集められるようになった。

今はもう、遠慮なんかしない。

タエコは、そっと引き出しを開ける。



いつか 一人住まいして、家中お気に入りで埋め尽くすんだ・・
ヤマモト先生のプロポーズは、早い内に断ろう。
・・・これは、絶対に見せられないわ・・




猫だの星だのハートだの、いっぱい付いた 
およそ「文房具」の形をしていないような小物たちが
ぎっしり並んだ引き出しを  

うっとり眺めながら、タエコは考える。


コメント

そおねぇ・・

たしかに この頃は、おもちゃ的な文具があふれてて
また、子ども達、いっぱい持ってて、大事にしてないの。

欲しくて欲しくて・・なんて 思うこと なくなっちゃってるかもね。
このふたりは結婚しても うまくいかなさそうだ・・と思うんだ。

価値観

って、みんな違ってていいと思うんです。
それなのに、自分の価値観を押し付けたがる人のなんと多いこと。
誰かにとってゴミでも、自分にとって宝物なら、それでいいんです。
自分にとって大切な人が、他人にとって大切な人でなくても、
文句を言う筋合いのもんじゃありません。

価値観の押し付け合いが無かったら、
争いごとも、一気に減少するに違いない!

この男の先生が言ってることは、間違ってない。
学校は、基本的には、勉強する場所だから。
でも、コミュニケーションを楽しむ場でもあると考えるなら、
もうちょっと違った行動が出来るかなぁ。

タエコさん、いたたまれなくなかったかな~。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

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