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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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さよなら とけちゃったかき氷



「おやつ何にしようか」
ママは冷蔵庫の前で思案した後、冷凍庫を開けた。
「そうだ、かき氷 してあげるね」

シロップをかけただけのかき氷はあんまり好きじゃない。
抹茶のシロップにつぶあん添えて宇治金時か、イチゴでもせめてミルクぐらいかかってたらな と思う。
でも、「タケル君」と向かい合って座っても、何を喋ればいいかさっぱり解らないから、黙々と食べた。
黙って食べたら余計、頭がキンとした。

「ふう、一気に食べちゃったよ、美味しかったぁ」
わざとらしいくらいのテンションで言ってみる。
タケル君は スプーンでかき氷の表面をぺたぺた叩くばかりで、
器の中はちっとも食べた様子がない。氷はほとんどピンクの色水になっていた。

─感じ悪っ。せっかくママが用意したのに。
ちょっと睨んでやる。
何でこんな子と急におやつ食べることになったんだ。

その日、向いの芳子さんは腰を痛めて病院に行った。「タケル君」は芳子さんの孫で、この夏休みの間 独りで泊まりに来ているらしかった。
「小さい頃はよく一緒に遊んだのよ」
ママは言うけど、あたしには全く記憶がない。小5にもなっていきなりそんな男子と遊べといわれても戸惑うばかりだ。加えてこの子ときたら愛想もないし、何を考えてるのか全く分からない。

「嫌いだったら嫌いって言えばいいじゃん。無理しないでさ」
あたしは言ったけど、もちろんそれはかき氷のことだった。
なのにタケル君は 急に顔を真っ赤にし、唇をぎゅっと噛みしめてこちらを見、
そしてそのまま だんだん青ざめていった。
一瞬の内に こんなに人の顔色が変わるのをあたしは初めて見たのだった。

泣くんじゃないかと思った。殴りかかって来たらどうしようと思った。
だけどタケル君は泣きも殴りもせず、いきなりうちを飛び出して行った。
何だかもの凄く後味の悪い かき氷だった。
その次の日からタケル君は、向かいの家からいなくなった。
腰を痛めたお義母様にはいつまでも預けられないと言って、タケル君のお母さんが迎えに来たからだ。

「離婚するって決まったんだって。タケル君のところ」
ママは窓の外を見ながら そう言った。向かいの庭先に芳子さんが ぽつんと立っていた。
いつもより小さく小さく見えた。


「暑いねぇ」
通りすがりを装って 芳子さんに声を掛けた。
「ああ、やっちゃん、かき氷好きかい?」
芳子さんは あたしにくしゃりと笑いかける。
「孫が夏の間泊まるっていうからさ、大きいの買い込んじゃって。 イチゴのシロップ、あげようか」

あたしは こっくり、ただ頷くしかできなかったんだ。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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