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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「つ」~つえ

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母親とケンカした。

クラブもずっと 行ってない。

授業 抜け出して 塾もパス。

何をやってもつまんねぇ。
やりたいことなんか何もない。
どいつもこいつもつまんねぇ。




ユウキはイライラした足取りで 土手の道を歩いていた。

風景がみんな、ヘタクソな 書き割りの舞台装置に見える。



何かがコツンと ユウキのかばんに当たる。
「何だ?」

白い棒が、コロコロ斜面をころがり落ちていった。

振り向くと、白髪のじいさんが 立っていた。
目が見えない人らしい。
歩くのに必要な「白い杖」ってヤツだ。


「すまんがぁ、キミぃ 
  杖を拾ってきてはぁ くれまいかぁ・・」


知らん振りして、行っちまってるかもしれないんだぞ
もし そばにいたって、危ねーヤツかもしれないんだぞ

困ってるくせに、やけにニコニコして、
のんびり話す じいさんだ・・

チッと舌打ちして、ユウキは杖の行方を目で探した。

草丈が高い。

上から見ても 杖の場所は判らなかった。


 かばんをドスンと置いて、
「かばん、ここ、置いとくから。」

じいさんをかばんのそばに座らせた。
車が来ても、危なくないところだ。


ガードレールを飛び越え、ザクザク草をかき分ける。

何かのファンタジーに出てくるじいさんみたいだな。
マントと三角帽子の姿を想像し、
想像する自分に少し驚く。



数年前、弟と、ファンタジーの物語にハマってた。
そんなことも、すっかり忘れてた。


湿った土。

靴の裏を通しても解る 懐かしい 感触。


小学生の時は、ここでよく遊んだよな。

中学になって、タカヤは野球部で忙しくなったし、
ハヤトは塾と家庭教師でヒーヒー言ってる。



水の中、キラリと光って、川面をはねるものがある。

サカナ!

釣りはタカヤが上手かった。
ハヤトは、魚の名前をたくさん知ってた。

ふざけて、川に落ちたこと あった。
うちのカアサンは、おぼれたって思ってて、
顔見たとたん、わんわん泣き出したっけ。



手を切りそうな、鋭い葉。
触るとやわらかい 葉。
土のにおい。
草のかおり。




「花ぁ・・いっぱい・・咲いとるだろう。」


突然 じいさんの声で われに返る。

「残念ー。・・・草ばっかだぜぇ・・  
         雑草・・・・だけー。」

じいさんに合わせて 喋るテンポが遅くなる。



草をかきわけて 進むうち 
これは カラスノエンドウ・・こっちは スイバ・・

そんな名前を知ってた自分に また驚く。


「やっぱり、花、咲いておろうがー・・。」

じいさんは 気持ちよさそうに 笑っている。

上で座ってるだけのくせに しつこいなぁ・・
そうは思ったが、気をつけて見るうちに、

小さい小さい「花」が、ひとうひとつ 見えてきた。

そこに 一種類・・あそこにも 一種類・・。

ザーッと 風が吹き抜けて、顔をあげると
周りの景色が 何だか急に、鮮やかに広がった気がした。


「杖、あったぜー」

土手に上がって、白い杖をじいさんに手渡すと、
じいさんは ニッと笑って 礼を言い、
杖をついてスタスタ歩き出した。


ユウキは はじめ、その後姿をポカンと見ていたが
  
オイ、ひとりで大丈夫なのかよ

一歩踏み出した。



じいさんは、クルリと振り向くと、
杖を ユウキの胸の高さにツウッと上げて、円を描くようにすると


「ここで 見る。 何でも 見える。」


そう言って、高らかに笑った。



強い草の香りがした。

川面に キラリと魚がはねた。

土手には 幾多の花が 揺れていた。


コメント

おとなになる前に

色んな思いをしたほうが
認めることの幅の広い おとなになれそうな気がします。

嫌だ、嫌いだ と否定する方が 今は多くっても、
次にはきっと 大好きなこと 愛すること を見つけられる
そう 信じて・・・見守ろうと、うちの「中学生」のこと 思っています。

こっちの絵も素敵♪

ちょっと斜めな感じの男の子の絵も良かったけど、
穏やかそうなおじいちゃまの絵も素敵♪

「認める力」って、大人に最も要求される力かもしれません。
認めるには、相手をちゃんと見て、受け入れるだけの度量が
必要ですしね。

大人で居るって言うのも、しんどいもんですね。
(そこにまとめるのかよっ!)

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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