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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「て」~てつぼう

tetubou.png

クル、クル、クル、クル・・

1人きり 公園の鉄棒、
サツキは 風切って 回ってた。

空中逆上がり・。
長い髪の隙間から日の光が漏れる。

「サルみたい」

いつも学校で皆が言うように、クミコはつぶやいてみた。

けれども 心の底で どんなに感心してるか解っている。
・・かっこいい・・とさえ思ってた。


「キモトさん、鉄棒 練習するなら ここ 空いてるよ」

回るときに クミコの姿が見えてたのか、
タケダ サツキが声をかけてきた。

そして クミコが答えるのも待たず
「あ、そうか、鉄棒は見学だったっけ。」




幼稚園のとき クミコは鉄棒から落ちた。
よく覚えてないのが不思議だが 
骨折だけでなく何針も縫う大怪我だった。

だから、1年生の時 鉄棒を前にして、
クミコが気分を悪くして倒れたと聞いて、
お母さんは「もう無理しなくってもいいのよ」と言った。

心理的な要因・・とお医者さんは説明した。



毎年、クミコは誰にも内緒でここに来て 鉄棒に触ってみる。

今年は できるかもしれない
・・ひんやり冷たい鉄の棒に 身体を押し付けて、ぐいと伸び上がる。

「無理しなくていいよ。」
母親の声が 聞こえる気がして、手を止める。



「いいじゃん、しなくていいならさ。」

大人びた物言いをする サツキは、
いつも 皆から少し離れた距離にいた。

家庭の事情とかで 可哀相な子らしいよ
・・母が言ってるのを聞いたことがある。

「鉄棒なんかできなくたって、困らないよ。」
サツキは さらりと言ってのける。
得意なくせに、バカにして・・・。
クミコは少し ムッとした。

「でも タケダさんはいつも気持ちよさそうに回ってるじゃない。
                私には無理かもしれないけど。」


サツキは ひとの顔をまっすぐに見る。
自分の心を見透かされてるようで 居心地が悪い。

クミコが 視線を落とすと、
サツキは 身軽な動作で、おしりから鉄棒に飛び乗り、
足をぶらぶらさせて、座った。

「いいこと 教えてあげようか? 
   クルクル回るより、私が好きなのはさ・・・」

そして ひざを鉄棒に引っ掛けて、さかさまにぶら下がった。

「こうして、逆さに 風景見るんだ。
   いろんなことが 違う風に見えてくる・・・。」




そして、少し長い沈黙のあと、クルリと回って 元の位置に着地して、
「キモトさんも、やってみなよ。補助してあげるからさ。」

嫌だ、やっぱり止めるよ、怖いよ、落ちるよ・・

サツキは 泣きべそかくクミコの身体を支えて 鉄棒に座らせた。

「大丈夫だよ、絶対離さないからさ。
      たまには ひとのこと 信じなって・・。」

たまには・・って何よぉ・・

ふわりと 上半身が後ろ向きに倒れた。

「あっ」
一瞬血の気が引く。

けれど 背中は サツキの手にしっかりと支えられていて、
ゆるやかに後ろに倒されていった。



さかさまの世界。

ひざに触れる 久しぶりの鉄棒の感触。

地面の小石、短い草、生垣 高い木のこずえ・・

空・・・青い 深い 空。



横から声がして、気がつくと 
さかさまにぶらさがったサツキが 
一緒に並んで 揺れていた。

「ほぉらね、案外 いいもんでしょ?」


「タケダさんたら、足 ちゃんと持っててよぉ
     ・・・絶対離さないって言ったくせに・・・」
情けない声で、クミコが叫ぶ。




さかさまの世界で、クミコとサツキは 思い切り笑った。


きらきら 木漏れ日が さかさに ゆれた。


コメント

どきどき

Amiceさんは ダレを思い出したのかな?
運動の得意なコ、博学なコ
優しいコ、色んな子がいましたね。
ちょっとした会話も 妙にうれしかったり・・。

うふ♪

みなさん、鉄棒には思い出がおありになるのかな。
コメントが多いですね♪

知らない世界に一歩踏み出す時って、
友だちが手を引っ張ってくれたり、背中押してくれたりしますね。
この場合は、ちょっと大人びた子の手招きかな。

うふ。
なんか、こういう、知らない世界に誘ってくれる友達の話って、
昔好きだった男の子を思い出して、
どぎまぎしちゃいます。(いやぁ~ん♪)

ターさん、

友達と、自然と いっぱい遊んだ いい経験をお持ちなんですよね。
だから ターさんの描く 草花が 生き生きして綺麗なんだ。

失敗しても、ヘタクソでも 笑い合える
そういう 友達が いたら いいですよね。

思い出す・・・

鉄棒練習=怪我。木登り練習=怪我。
それでもやめられない。
何かが出来るようになるのがうれしいんですね。
何かが出来るようになるきっかけはやっぱり友達ですね。
友達というのはうれしさも楽しさも共有ですから。

ほっ・・

として 貰えましたか?
それは 一番 うれしい褒め言葉です(^。^)

どんな やな思い出話をネタにしても やっぱり どこか
よかったね、大丈夫だよ といえるところが ほしい。
そう 思っております(*^_^*)

C= (-。- ) ホッ

とするね、なずなさんとこ来ると・・・。
なんだか、忘れていた子供の部分を取り戻せるような
気がするからかな。
早く「と」から先が読みたいです。

なつかしい鉄棒・・

aoiさん kazahanaさん コメントありがとうございます(^。^)

鉄棒 しましたよね~。
逆上がりって、おとなになったら もう全然できません。
(昔は一応 できたんだけど・・)
今考えたら、鉄棒も跳び箱も、出来なくたって困らない。
でも こどもにとっては 一大事だったんですよね。
練習してる子見かけたら、ついつい
「もうちょっと おしい、おしい!」って声かけそうになります。

逆さまになって眺めた風景、どんな風に目に映ったでしょうね。
きっと、当たり前の景色も、新鮮にみえるんだろうな~。
とっても、優しい気持ちになれるお話ですね。
なずなさんの物語は・・・

“鉄棒”とか、“逆上がり”とか、なんだかなつかしいです!(逆上がりはできませんが…(笑))

私も時には、こんなふうにイキイキとした記事をのせてみたいですね~!

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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