STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

満月の夜に~公園の童話③

春のトラックバック企画「月と桜」に参加した時のものです 
          2005.4  50音順:「ま」


mooncat.png




毎年、桜の花が咲きだすと
公園の係りの人たちが 花見客のために
提灯の準備を始めます。

去年、じいさん桜の周りには
花を 下から照らし出す、ライトも取り付けられました。

ますます見事な 夜桜に
たくさんの人がやって来て 
口々に じいさん桜を 褒めて行きます。


若い桜は、そんなじいさん桜を 
いつも誇らしく思っておりました。




夜の花見の客が 増えだすと、
若い桜がうきうきするのに対して
じいさん桜が、ますます無口になっていくことは
若い桜も 気づいておりました。

それでも、前は ぼちぼち、
昔話なんぞを しゃべってくれていたのに

去年からのじいさんときたら
提灯の準備の始まる頃から、
むっつりと押し黙ったまま
何一つ答えても くれません。 




お喋りすずめが言いました。

「じいさんは うるさい歌がきらいなのよ。
  花見の客の歌ったら、全くひどいものだもの。」



知ったかぶりのカラスが言いました。

「じいさんは オイラが ゴミの置き土産を喜ぶのが 
             気に食わないのさ。」


春風が ふわりと口を挟みます。

「違うわ。桜じいさんは 威張ってると思われるのがいやなのよ。
    一番の人気者は 桜じいさんなのは 皆認めてるのにね。」



若い桜は みんなのおしゃべりを聞きながら、
どれもそのようであり 
でもやっぱり 
どこか違うような 気がするのでした。

 
  

桜じいさんの足元で 昼寝していた黒猫が、のっそり起き上がり、
じいさん桜を 首を伸ばして見上げた後、

慌てて飛び立つすずめを チラと横目でみただけで 
ツイと どこかへいってしまいました。

誰も その棲家を知らず、
いつからこの公園にいるのかもわからない黒猫、
じいさん桜と 同じくらい長生きしてるという噂のある 黒猫です。






「桜じいさん、今日はいいお花見日和だね。」

「今日の夜あたりは 随分と人が集まって にぎやかだろうね。」

「じいさんの足元は 一番人気だから、
  ほら もうこんなに早くから 場所を取ってる人がいるよ。」

若い桜は じいさん桜の心の内が 解らないまま 
時々話しかけてみましたが
やはり じいさんは 黙々と見事な花を咲かせているだけです。






ある日、久しぶりに 黒猫がまた、桜じいさんの足元にやってきて、
一声「ミャウ」と鳴きました。

若い桜は そのとき、じいさん桜が
久しぶりに「ホゥ・・」と  
ため息とも返事ともつかない 声を出したのを 聞きました。


その夜のことです。



大勢の花見の客の 
それぞれの宴がにぎやかな その時に
どうしたことでしょう
フイっと ライトが消えました。

つづいて、連なって揺れている提灯も 消え
あたりは 漆黒の闇になりました。



一瞬のざわめきの後、誰とはなしに 空を見上げると
雲の間から、それは美しい満月が現れ
じいさん桜を 上から 柔らかな光で照らしました。



若い桜は、お月様に照らされて
ため息がでるほど美しい じいさん桜を見て

じいさんが一度だけポツリと言った
「お月様に 申し訳ない。」
という言葉を 思い出しました。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「何でまた 電気がいっせいに 消えちまったんだろう。」

「まぁ いいさ、すぐに復旧したことだし。
  どこからも苦情が来なかっただけでも 儲けものなのにさ、
  なんとオレなんか、今日褒められちまったんだよ、            
  すばらしい夜桜でしたってさ。
 
  オイ、黒猫、お前 昨日の晩、
  電気に何か悪さ しなかっただろうな?」



じいさん桜の周りを掃除する 公園の係りの人たちの足元で
 
黒猫は 目をつぶったまま、

耳だけピクン、と動かしました。
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コメント

林檎さん、

夜桜もいいけど 夜のもみじもなかなかいいです。
あ、そろそろ 雪・・
ほの明るい中、夜に降ってくる雪は 
すごくいいですよ~
こっちは あんまり降らないけど・・。
コメントありがとうです(^。^)

こんにちは

いいな、夜桜、まだまだなのに、見たくなっちゃった。

おじいさんって

私には 最初から出会えなかったせいか
なんだか 「おじいさん」に 
物語の大事なところを託してしまいます。
おばあちゃんも 素敵な人たちだったけど
もう いません。
両方そろってる ウチの子たちが 羨ましいです。
・・・そんな話じゃ なかった・・よね。

またまた、ほのぼのさせられました。。
おじいさん桜の礼儀正しさというか、実直さというか、ものすごくジーンときました。
うちにもリンク貼りました☆よろしくお願いします^^

kazahanaさん aoiさん コメントありがとう。
Amiceさん 「さくら」のお話のURL ありがとう(^。^)

「月」と「さくら」をテーマにした お話か画像 句 詩など
トラックバックで集まる企画があって
そのとき 参加させていただいて できたお話です。
kazahanaさん、私もそのとき東山魁夷の月明かりのさくらを
思い出していたんですよ。
幻想的で大好きな絵です(*^_^*)

ライト・アップ

どのくらい前から、増えたんでしょうね、夜桜のライト・アップ。
まだ、沿道を照らす提灯の灯りは許せるとしても、
桜にスポットライトを当てるような光の使い方は、嫌いです。
遊郭の花魁じゃないんだからさぁ…。
桜に限らず、花は、あるがままで十分見ごたえがあると思います。
陽の光の中でも、雨に濡れても、月明かりに照らされても。
夜の桜にライトを当て続けていたら、
きっと「花灯り」なんて言葉は死語になります。
それは、寂しいと思うんだけど…。 古い人間だからそう思うのかな。

桜つながりで、お話のURL置かせていただきます。
http://page.freett.com/Amice/spring.html

おはようございます!

なんか、昔話とかに出てきそうな物語ですね!
桜は、本当に繊細で、神秘的で、情緒ある花ですよね。

私も、桜じいさんの気持ち、なんとなく分かるような気がします。

ひそかに、黒猫と桜じいさんとは友達なのかな?
と、思ってみたりもしました。

こんばんは!

桜の季節は待ち遠しいけれど、
提灯とかブルーシートとかなければいいのになって
思うことありますね^^
はかない色した桜には、優しい月明かりが似合いますね♪
東山魁夷の月と桜の絵を思い出しました。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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