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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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ベンチ~公園の童話②

やすみさんがベンチの画像をHPにUPされたときから 
何か物語をつけさせてくださいとお願いしていました。
お待たせしました やすみさん。(笑)

               2005、8月、50音順:「へ」

sakurabennti.jpg






公園の じいさん桜の そばに
古いベンチが ひとつ ありました。




そのベンチのところに 
ある日 少女がやって来て
立ち止まって 話しかけました。


「わたし あなたを 知ってる。
 小さい頃 おかあさんと 
 しゃぼんだまを持って、よく来たわ。

 しゃぼん液のフタが うまく開けられなくって 
 ここで全部 こぼしちゃったことがある。

 ねぇ、ベンチさん、覚えてる?」




 
「さあてね、たくさんの子どもが 
 ここで しゃぼんだまをしたがるさ。

 そして 子どもは よくこぼす。
 おかげで、こっちはベタベタさ。
 迷惑な話だね。」



ベンチが何と 返事したか 気にする風もなく

「ふふ、なんだか 懐かしいね。」


少女はベンチを そっとなぜて、
スキップしながら 行ってしまいました。






また あるときは 青年がやって来て言いました。

「ああ、このベンチだ。
 小学校の はじめての遠足で お弁当食べたっけ。

 一緒に食べようって どうしても声をかけられなくて
 一人で ここに座ったら
 友達が ひとり また ひとり 寄って来た。
 一緒に 食べた。
 いいベンチ 見つけたね、って。」



ベンチは また 気難しく つぶやきます。

「小学生は どろんこ靴で
 足をブラブラさせるから 嫌いだね。

 なのに たくさんの 子どもが 
 わたしに座りたがって ケンカする。」



青年も ベンチと そのあたりの景色を
懐かしそうに 見渡して

「あれから 友達がたくさん できたんだ。
 あの日の お弁当は 最高においしかったよ。」


そして 何度も 振り返り 振り返り
行ってしまいました。




このベンチで 赤ちゃんに ミルクを飲ませたのが 
とても懐かしい という お母さんにも

初めての彼とドキドキしながら 座ったわ、という お嬢さんにも

ベンチは 同じように つっけんどんに答えます。




そんな ベンチの態度を見るにつけ
若いさくらや 季節の風たちが 
はらはらしたり いらいらしたりするのに 

じいさん桜は おだやかな顔のまま
ベンチの答えを 黙って聞いているのでした。






おしゃべりすずめが
公園の工事の話を 聞いてきたのは
じいさん桜の 花の時期が終わって 
公園に 静けさが 戻った頃でした。


「古ーい ベンチなんてさ 
 この機会に 一掃 
 なんてことに なるんじゃない?」

からすが勢いづいて言うと すずめたちも

「そうそう、新しくって おしゃれなベンチ、
 別の公園で 見た。

 あんな ベンチなら ここに 似合うわよ。
 ねぇ、さくらじいさん。」



じいさん桜が 返事をするかわりに
根元で昼寝していた 黒猫が

「ミャウー」
と一声 小さく鳴いて 
のっそり その場から 離れて行きました。




ベンチの下に 黒猫がもぐりこんだ時
おばあさんと若い娘さんが 
やって来て 座りました。



「おばあちゃん、おばあちゃん、
 思い出す?

 初めてここが 公園になったとき
 家族で 競争して このベンチに座ったんだってね。


 おばあちゃん、
 さくらの季節は にぎやかだけど

 おばあちゃんは このベンチに座って見る 
 どの季節の風景も ひとつ ひとつ
 大好きだったんだってね。

 おばあちゃん、

 そんな 話を 私が小さいときから
 いっぱい いっぱい してくれてたんだよ。

 おばあちゃん、おばあちゃん
 何か 思い出した? 」



おばあさんは 静かに顔を上げ
あたりを 見回し 小さくほほえんで
ベンチの ペンキのはがれたところを
そっと 指で なぞりました。


ぼんやりと どこかを見ているような その瞳に 
やわらかい光が 宿ったように見えました。




じいさん桜は 
そんな ふたりの座る ベンチの上に
静かな 木陰を つくり

さわさわと 優しい葉っぱの音を 聞かせてやりました。








ベンチの上で 黒猫が動きません、と
報告をうけた 公園の管理の人が駆けつけたのは

そのベンチを運び出す 予定の日のことでした。




「たかが ネコ一匹で どういうことだ。」

管理の人が 見にいくと

どうしたことでしょう



カラスたちと すずめたちが
ずらりと並んで
行く手を邪魔します



ベンチの上には いつもの 黒猫が どっかりと 座り 
近づこうとすると 
「フー」

威嚇の声を出し ジロリと睨みます。


カラスも すずめも ベンチを少しでも動かそうものなら
いっせいに 飛び掛ってきそうな様子です。




      ****************





じいさん桜の そばに
古いベンチが あります。

ペンキを 塗り替えられ
修理され
古いけれども それは大切にされています。






ベンチは このごろ こんな風につぶやきます。



覚えていてくれて ありがとう。
思い出にしてくれて ありがとう。


それは 何よりも 幸せなことなのだね・・・

なぁ・・さくらじいさん




そう言ってから コホンと咳払いしては
また、気難しい顔をして
黙り込むのでした。









画像のベンチ・・木製なのかな
何年くらい持つものなのかな、鉄製だったらどうなのかな・・なんて 疑問もむくむくしてきたのですが UPしてしまいました。
じいさんほど年寄りベンチじゃないのは 確かなんですが
やっぱり いつかは 取り替えられてしまうのでしょうかね・・
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コメント

ハイ (^。^)

あんまりしゃべらない 主人公じいさんですが
「公園の童話」のカテゴリーで
 桜じいさんシリーズになってます~


幸せ気分になりました

さくらじいさんシリーズですか??
いいですねぇ(^▽^)ノ
思い出ってなくなると悲しいですモンね。

Yassさん

いらっしゃいませ。
ステキな文章のblogをお持ちなんですね。
物にまつわる 大切な思い出を描いた物語も 見つけて
なんだか 嬉しかったです。

ジーン……

すごくいいお話です。
涙腺が緩みました。
何気なく使っている公園のベンチにも、歴史があって、物語があるんですね。
うーん、いい話だ。

最初の画像は・・

たしか 寒い季節でしたよね。
四季撮って欲しい なんて注文しちゃって。

あっちの写真も好きだったな。

aoiさん、ね ステキでしょ 

凄く素敵なロケーションですね!!
やはり桜はなごみますよね~♪
花の王様(女王様?)といった感じです。
お話も、とても癒されますしね!

こんな場所で絵を描いたら、良いものが出来そうな感じがするなぁ!

とっても、素敵な物語!!

そうなのよねぇ。公園のベンチって、いろんな物語をずーとみてきてるんだわ。

ちょっと、気分が落ち込んだとき、あの公園のベンチに座って、ベンチや周りの桜の木たちとお話をすれば、勇気がもらえるでしょうね。

温かいお話をありがとう。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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