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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「は」~母 (陽だまりの部屋)

俳句の屁散人さんがHPの「今日の一句」を「雲のあしあと」という本にまとめられました。
日々 感じたこと、考えたことを綴った 短い文章(詩)と一句、
そこに 懐かしさや あたたかさが いっぱいつまっています。
ご了承頂いて、その中の 一編から イメージを頂いて stotyを作りました。
(内容は すっかり フィクションになっています。
     登場人物は 屁散人さんとは 関係ありません) 
 

mamegiku.png



電話の 姉のナミエの声は 
ひさしぶりに おだやかだった。

─ とにかく一度 お線香くらいあげに 帰ってきなさいよ。
 大丈夫、もう 説教したり説得したりする気も ないからさ。





 田舎に残って 父母と同居し 
 その条件で結婚相手を探した 姉のナミエには
 色んなことで 迷惑をかけた。

 語学が勉強したいとか 
 適当な理由をつけて 家を出た時 
 父親は カンカンに怒った。

 けれど母親は 
 姉夫婦が 小遣いとして 月々くれるお金を
 こっそりためて ユキオに仕送りし続けてくれた。

 小さな畑でできた野菜と一緒に 
 それを 送っていたことを
 後で知ったナミエは 
 当然だが 気を悪くした。




一度も帰らないユキオのために
そのまま おいておくよりも
小学生になった息子のショウタに 
部屋を 空けてやって欲しいと ナミエが言ったとき

母だけが 頑として譲らなかったという。



─ 好きにしなよ、どうせ 帰らねぇから。

部屋にあるものは全部 捨ててくれたって構わない。

ナミエの電話にそう言い放って
ユキオは連絡を絶った。



父親が 亡くなったときも 
今更 長男ですと のこのこ出ていけないと思ったので
葬式にも出なかった。



そして数年の後 母親も 
あっけない程静かに 亡くなった。

電話でナミエと話しているうち またケンカ腰になり
そのまま葬式にも出ず 
残されたもの一切いらないと放棄した。




どうせ 帰っても 居場所がないんだ。

ユキオは そう思っていた。







「お母さんの部屋よ。」

柔らかい日の当たる 小さな部屋だ。
陽だまりの畳に 母が座って 
今にも「おかえり」と 声をかけてきそうだった。



「入りなさいよ。」

─ 今更 何を 見せたいんだ。
ふてくされた顔で 姉に続く。

一歩踏み入れて ユキオは言葉を失った。
驚いたことに、奥の壁際の一隅が 
そのまま「ユキオの部屋」だったのだ。



懐かしい勉強机 本棚 ベッドに ギター。

ポスターや 写真の類は さすがに壁にはなかったけれど
きれいに まとめて ベッドの上に置かれている。
母がベッドを使っていたわけではないことは すぐに解かった。



「私が 使うんだ って 
 母さん、ひとりで全部 運びこんだのよ。」

身体の小さな母が 背中を丸めながら 
ひとりで この勉強机を運ぶ姿を ユキオは想像した。


「ばかなものよね。母親なんて。」





ちょうど 開いたドアから、ナミエの息子のショウタが覗く。

「あれ、おじさん 久しぶり。 
  なんだ、生きてたんだ。」

ショウタは ニッと笑って、そのまま通り過ぎようとする。




─ カアサンには 内緒なんだけど・・・
  家を出て 大学行きたいんだ。
  就職も できたらそのまま、そっちでしたい・・・。


ショウタが 電話でユキオに相談してきたのは つい最近のことだ。





「子どもなんて、いつの間にか こんなに大きくなってさ
 結局 ふらふら どっかへ 行っちゃうんだ。」


自分より 背の高い息子の うしろ頭をパコンとたたいて

ナミエは ため息をついて 少し笑った。



コメント

ひろさん いらっしゃいませ。

「おかあさん」像も 世代が変わっていくと
変化していくみたいですが
思い出すと 心がほっこりあったかい 
そういうのが いつまでも
「お母さん」であってほしいな、と思います。

わが身・・反省することが多すぎて・・(T_T)

はじめまして

お母さんの愛というか、思いやりが伝わってきて、とてもいい物語ですね。

ポンポンと

憎まれ口たたいたり、それ もう聞いたよ!って 冷たく言ったりするのも、親子だから・・。(^_^;)
気持ちが 通じてれば それも いいんじゃないかな、と思います。
優しい言葉ももちろん 大事だけどネ。

昨日も、母が電車で一時間以上かけてやってきたの。
それだけでも、大変で、もっと、労わってやらなきゃいけないのに、相手をしてやるのが、煩わしいのよ。困ったもんです。

自分の子供のためだったら、自分のことは、どれだけでも後回しに出来るのに。。。

おかあさん

aoiさんのお母さん、大きな愛情で包んでくださってるのでしょうね。
やすみさ~ん、私も 男の子の母親になって 男の子の可愛さ 難しさを感じています。
これからだね、「母」の悩みは・・(^_^;)。

絵日記の方で「屁散人さん」から コメントいただきました。
ありがとうございました。

身につまされる話です。しくしく。

親には、冷たく。でも、子供にはどこまでも甘く。人間って、不思議。

今回は、家族のそれぞれの想いがリアルに表現されていますね。
うちも、やはりいろんな意味でお母さんは偉大でやさしく、一生頭の上がらない存在なのですよ・・・。
なぜに、あれほどに無償の愛情を注ぐことが出来るのか・・・やはり偉大な人ですよ!!

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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