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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「む」~ムカデ競走

ちょうど運動会の季節です。今年は秋晴れの いいお天気に恵まれました。
あちこちで 色んなドラマ うまれたのでしょうか?









「足が 一本一本 勝手なこと考えてたら 前へは進めないぞ。」

練習を見に来た 担任のキムラが
嬉しそうな顔を一瞬引き締めて 言う。

ボクたちは 今日 「ムカデの足」だ。
  
            

体育祭では 毎年 クラス対抗の「ムカデ競走」がある。
笛吹きの役と 先導の役、 ふたりを除くクラス全員が 
縦一列になって 紐で足を結び 速さを競う。




         *



「人間は 考えるアシ」


テツガク科だかなんだかを出たキムラは 
余談と言って、そんな話を始めたら、
生徒が聞いてようが 聞いてまいが お構いなしに 語り出す。
誰かが「葦」を「足」と 思い違いしたまま 茶化してた。

キムラが さっき言った「足が考えてたら・・」も
案外 笑いを取るつもりだったのかもしれない。


中3になって 私語や無駄に騒ぐヤツは減ったけど
授業が 面白くなったって訳では ない。

「内申点」が 受験に大きく響くのが 解かっているので
そこそこ おとなしく やり過ごしてるだけだ。





そんな うちのクラスが 「ムカデ競走」にムキになった。 
理由は 大したことじゃない。

隣の担任の体育担当のツジが みんな 嫌いだった。
ツジご自慢の 筋肉バカの集まりの 隣のクラスが 嫌いだった。

うちの担任のキムラを あからさまに 見下した言い方で
「オタク」扱いするのも 我慢できなかったし 
ツジが ボクらのクラスで それをネタにして
笑おうとしたのには 呆れた。

キムラが特に好きだったわけじゃない。
もしかしたら 理由なんて 何でも良かったのかもしれない。






ボクは クラスの中で 極端に背が低い。

多分 ムカデの足のメンバーに入ったら 
足の長さの違いでひとり苦労しそうだし
第一 酷くカッコ悪い。 
その上 転んだりしたら 皆、崩れて 大変なことになる。


体育祭の出場種目の割り振りの時から 司会してたのをいいことに
あまり理由にふれずに 「先導役」になれた。
「先導」は 足を結ばない。
「ムカデの足」にはならずに 一番前のヤツの腕などを取って、
ペースメーカーをする。

「笛吹き」も足を結ばない。 
これは虚弱体質で体育を休みがちな アオノが 申し出た。
音楽が得意で リズム感には 自信があるとか、そんな理由だ。


どこにそんな 「やる気」が潜んでいたのだろう・・。

いつの間にか クラスは
「打倒ツジ学級」から「ムカデ優勝」に目標を変え
キムラから 優勝したら昼メシおごってもらう約束までとりつけた。

「昼メシ」が理由についた後 
ボクらは HRだけでなく昼休みまで 練習に励んだ。

シラケたことを言い出すヤツもいなかったし 
クラスは妙な活気に包まれた。

         
           


              *


午前の部の、他の競技は思った通り 
パッとしないまま 終わった。

担任のキムラも 先生参加の競走で 
頑張って走ってたが ビリだった。

だけど 虚弱体質のアオノは ちゃんと 休まず来ているし
クラス全員が 午後の部の「ムカデ競走」だけは
勝つんだと思ってる。





「オカザキが 来てる。」



皆の目が一斉に 同じ方を見た。
いじめられっことか ワルとかではない。
「なんとなく」学校休んでて 
たまに ふらっと やって来るヤツ。



「何で今日 来るんだよぉ。」
「しかも 弁当持って 今頃・・・」
「ってことは 『ムカデ』出るの?」

あわてて クラス委員のモトキが 担任のキムラを呼んで来た。



「クラス全員参加・・・だからな。もちろん。」
キムラは それだけ告げた。



イヤな空気が流れる。



「オレら 息合わすため 毎日練習してたんだぜ。
  ・・いきなりノコノコ来やがって 
         コイツ どうすんだよ。」

オオニシの言葉に みんなが頷く。
オオニシは 体操服着てなかったら 
父兄と間違いそうな老けガオしたヤツだ。



もう一度 キムラが繰り返した
「クラス全員参加だからな。」



一瞬 シンとなった後 みんな口々に言い出した。

オカザキに対しての文句、 キムラの態度への不満。




隣のクラスのヤツがニヤニヤしながら こっちを見てる。
俯いて じっとみんなの言葉を聞いている オカザキを見て
ふと 思った。

「なんとなく学校休んでる」って誰が言ったんだ?

オカザキの事情なんて 何にも知らないくせに。

オカザキのことだけじゃなく アオノのことだって 
モトキや オオニシや 他のヤツらの ことだって
 ボクは 何にも知っちゃいない。

誰の事だって 今まで 特別、興味を 持たずにきた。




─ 入れるとしたら どこに オカザキ、入れる?・・
  グチグチ言ってても しょうがないじゃん。

タカシマが 眼鏡を拭き拭き 言い出したのを きっかけに
ひとりひとり 互いに 考えを聞き合い始めた。





「オレが ムカデの先頭に 入って・・・」
どこから 出したのか解らないような声が
自分から 出た。

一瞬の 沈黙。


「『先導』をオカザキにして オレがムカデの先頭に入ったら
 何とかなるんじゃないかな・・。ペースなら解かってるし。」

笛のアオノが 
恥ずかしくなるくらい感動した顔をして こっちを見ている。

「歩幅が合うかどうか 心配だから 
    少し練習させて欲しいんだけど・・。」

誰に言うでもなく 言った。
「オレだけ 小っせえし。・・。」








弁当をかきこんで 校庭の隅 
「クラス全員」 ムカデになる。

やたら張り切ったアオノの笛が 青空に響く。
オカザキがボクの腕を おずおずと取る。
両肩には 後ろのヤツの手の重み、
・・なんだか 少し くすぐったい。





「何にも考えない足」の集まりじゃなくっても
 前にはちゃんと 進める。
ボクたちは 一人一人が ムカデの「考える足」だ。

それぞれが 考えて 合わせて 一緒に動かす。
きちんと意思を持った 「考える 足」。


こんなこと キムラに言ったら 何て言うかな。
また テツガク語り出すのかな。

結構 いいカオするんだよな。そういう時のキムラってさ。




午後の部の始まりを告げる アナウンスが 校庭に響く。
声を掛け合いながら みんな、駆け足で 生徒席まで 戻った。




コメント

hirononさんへ(^。^)

深く読んでくださって ありがとうです♪

実話がちょこっと入ってて、内容が広がりました。
こんな話なので 「誰かが」としてたところも きちんと 名前と個性をつけました。
きっと 誰もが主人公~♪って感じです。
描きたいことが膨らんできて、この頃 話が長くなりつつあります。(^_^;)

こんばんは!
わっ、ハイジさんもいる♪

きちんと意思を持った 「考える 足」。
すごくいいなぁ~と思いました。
このお話は深い感じで、なにか完成度が高いですね!
ただただ部品の一つになるのは、やっぱりイヤかも。

kazahanaさん♪

読んでくれてありがとうございます。
そうね、子どもの言葉遣いが悪くても
先生、あだ名や呼び捨てにしてても
根っこのところに まだまだある 温かいもの、熱いもの
信じていたいですよね。
子ども達は これから。信じて見守りたいです(^。^)

こんばんは

キムラ先生の思いを生徒たちがどのくらい受け止めたのかは
分からないけれど、
ちゃんと自分たちで考えて解決策を出していく姿に頼もしさを感じました。
きっと大人の想像よりは、
ずっとこちらの思いは伝わっているのかもしれませんね。

ファンタジー2作品

今 お友達サイトのファンタジー作品にハマっています。
フトンさんの作品は 
リンクの「プリンセスドリーム」のところから読みに行ってください。
現実的なところから どんどん ファンタジーになっていく
ところが 魅力的です。

ハイジさんの「ハイジのひとり言」のサイトも
冒険ファンタジーの大作が読めます。
短いステキなお話、詩もありますよ。

両方 登場人物が 魅力的で 先を楽しみに読んでいます
(^。^)

感動しました。
短編なのにとっても、心地が良くて・・・
やっぱり、すごいなwwと関心!!

フトンの作品も読んでくださって、ほんとにありがとうございます。私の娯楽作品なんて、足元にも及びませんが、またきてくださいね。ナズナさんのコメントにとっても励まされてます。
では、また来ますね。

わぁ、ハイジさん♪

早速 来てくれてありがとう(^。^)
今日中に さし絵UPしますね。
今コメントくださっても 全然問題ないですよ。心配しないで。

そうね~、これは 子どもの「今」からヒントを得てるんだけど
自分のは 夢かドラマか・・って何かよく解かります。
あのころ自分が感じてたことって 
ほんとのところどんなだったのかな・・とか。

挿絵が出来てからコメント入れたほうがいいのかな?
そこの所が よくわからなくてごめんなさい。

「考える足」・・・そうですよね。
「急いで大人になる前に」というカテゴリもいいですね。

一番多感な時期だった。
もう、自分の事は忘れかけています。(笑)
自分の思い出だったのか テレビの番組だったのか
夢だったのか・・・まあ、誰にもとがめられないですよね。

私の方にも来てくださって有難うございました。
すごく嬉しかったです。


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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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