STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

やさしい黒、やわらかな闇~公園の童話④

                         2005.11  50音順お題:「や」

black2.png





公園の秋も過ぎてゆき
じいさん桜のきれいに紅葉した葉も すっかり落ちてしまいました。

「なんだか 寂しくなっちゃったね、桜じいさん。」

立ち止まって眺めていく人もなくなった 自分達のはだかんぼの姿を
少し不満げに見ながら 若い桜は言いました。
「やってくるのは 猫だけだ。」


じいさん桜の幹は 立派で太く、
冷たい風を しっかり さえぎります。
葉を落としたこの時期には 
そばに気持ちの良い陽だまりもできます。

黒猫は いつも どこが公園の中で一等暖かいか 知っていて
のそり、やって来ては うつらうつら眠っています。

黒猫は じいさん桜と昔からの馴染みのようでありましたが
毎日 そばにいても 特に何か話しをする様子もありません。

若い桜は そんな黒猫とじいさん桜を 
少し不思議な思いで 見ておりました。



*  *  *


「あ、黒猫。私 猫は大好きなんだけど・・黒だけはダメなんだよね。」
「うんうん、解かる。なんか 不気味な感じするもんね。」

制服の女の子たちが おしゃべりしながら 通り過ぎて行きます。


「あーあ、朝から 黒猫横切ったぜ、不吉、不吉。」
「あっちから 回って行こうよ、お兄ちゃん。」

公園を抜けて学校へ向かう兄弟が その日は道を変えて行きます。


「シッ、シッ、 あっちへ行け。」

石を投げる男もいます。



そういう時 若い桜は 黒猫に何も声をかけないでいるのが
随分と薄情な気がして じいさん桜を伺い見ます。




「黒猫は 不吉なんかじゃないよ。 幸運を連れて来るって聞いたもん」
たまには そんな風にかばってくれる 子どももいます。

若い桜は嬉しくなって 黒猫の様子をチラと見るのですが
そんな時でも 当の黒猫は 全く気にも留めないという様子で
陽だまりで 目をつむったまま丸まっております。



*  *  *



「人間に興味なんかないっていう感じだよね、あの黒猫は。」
ある日、若い桜はじいさん桜に そんな風に話しかけてみました。

「誰かを好きになった事、ないのかなぁ」


黒猫は 今日も 
近寄って来る、気のよさそうな子どもから ツイと離れ

いつもエサをくれるおばあさんが来ても 
皿を置いて離れて行くまで 知らん振りして待っています。







「あの黒猫が 一度だけ ”女の子の猫”になった時のことは
 今でも はっきり覚えている。」

じいさん桜が ぽつり、話し始めました。


「女の子の 猫?」

若い桜が聞きます。

「そう、 女の子の 飼い猫だ。

 その子は いつも 同じ歌を歌いながらやって来るんだ。
 とても優しい綺麗な歌だった。

 そして 日向ぼっこしている黒猫を見つけると 
 必ず少し間を置いて 座る。

 持ってきた本を広げると 柔らかな声で読み始める。
 まるで 黒猫に読み聞かせるようにね。

 
 毎日、毎日 同じようにやって来て
 無理やり抱いたり エサで 引き寄せたりもせず
 女の子は 猫と 並んで座ってた。

 女の子の本を読む声は 心地よく響いて
 猫は うとうと夢見心地になりながらも
 続きを 楽しみに聞いているようだった。

 女の子が来るとき歌ってる、その歌が聞こえるのを
 あいつが心待ちにしているのが 
 周りの誰にでも 解かったさ。」



「黒猫と女の子は 仲良くなったの?ねぇ、桜じいさん?」


「そうさ。いつの間にか 二人の間の距離は縮まって
 肌寒くなる頃、黒猫は 女の子のひざの上にいたんだよ。」

若い桜は 女の子のひざの上で 
気持ちよさそうに眠る黒猫を 思い浮かべました。



「『寒くなるから ずっと一緒にいようね。
   一緒にいたら こんなにあったかいもの。』

女の子は 黒猫を 家に誘った。
野良猫暮らしを 結構 楽しんでいるように見えた黒猫も
女の子の誘いは 心から嬉しかったようだ。

─ 女の子について行くことにした 
ちょっと照れくさそうな顔をして、私に挨拶してきたものだ。」



「じゃあ、黒猫はなぜ帰ってきたの?捨てられちゃったの?」


じいさん桜は 随分長いこと 返事をしませんでした。

その間 何か大切なことを ゆっくり思い出しているようでもあり
その話の続きをするのを ためらうかのようでもありました。


「黒猫と一緒にいるとき 女の子が 咳き込んだり
 目を痒そうにしたりしてることに 気づいてはいたんだ・・。」

じいさん桜は 少し辛そうに言いました。




「数日したら 黒猫がふらりと戻ってきた。

 ─ どうした?ノラの暮らしが懐かしくなったかい?
 ─ ふかふかの 布団なんて 寝苦しいだけだったんだろ?
 
 皆が 口々に 言って笑った。

 ほんとは 
 ─ お帰り、戻って来てくれて嬉しいよ・・って
     そう言ってやれば良かったんだけれども。」



「女の子の身体は 猫といると調子が悪くなったの?
      黒猫は 皆に何と答えたの?」

「何にも言わんさ。黒猫はただ 前と同じように暮らしているだけさ。」


「女の子は 捜しに 来なかったの?桜じいさん?」

「来たさ。何度も、何度も。

 ─ 心配しないで。大丈夫だから、
   一緒に暮らしても 絶対大丈夫だから・・・

 泣きそうな声で 黒猫を呼びながら
 それは一生懸命捜していたさ。

 しかし 黒猫は 隠れてしまうんだ。 
 そして 女の子が あきらめるまで 出てこなかった。」


「ほんとに 黒猫は それで 良かったの?」


じいさん桜は 枝を静かに揺らします。 

「本当に 何が良いかなんて 誰にも解からないさ。

 けれど あいつは いつも いつも
 あの子の歌が聞こえる気がして 耳を立てる。
 サワサワと風の音がしている それだけのときでもね・・・。」




 *  *  *


お月様のきれいな 夜です。

今日は どこかで 野外演奏会でもしているのか
遠くから 楽の音が 聞こえてきます。

じいさん桜の足元に 夜にしては珍しくフイと黒猫が姿を現しました。

聞き覚えのある旋律に 黒猫は 耳をピンと立て 立ち止まります。





「黒は 好きな色だ」

じいさん桜は 音楽の一部のように静かに響く声で 呟きました。



「 お月様を際立たせる優しい夜空の色。

 小さな星の光を包み込む柔らかな闇の色。」
 
じいさん桜は ひとりごとのように 続けます。


「とても 美しい色だ。」





黒猫は 黙ったまま しっぽをゆるりと揺らしました。














猫アレルギーについて知ったのは、猫と暮らし始めてからのことでした。
私と私の家族は大丈夫でしたが、子どものお友達やご近所に数人いて
その人たちも 皆、動物が 大好きなのでした。


幾つかのサイトを巡って、
アレルギーがあっても猫と暮らしたい、
実際に色々工夫しながらも 暮らしておられる方の
様子を 読ませて頂きました。


アレルギーがあったら 「絶対に一緒に暮らせない」という意味ではないことと 
野良猫が野良のままで「ほんとうに」いい、と言っている訳ではないということを、
少し付け加えておきますね。



スポンサーサイト

コメント

色の持つイメージって・・

hirononさんところもクロネコさんいるんですね。
今日 本屋さんで カラーコーディネートの検定の本を
立ち読みしてました。受けるわけじゃないんだけど・・。
色の持つイメージって 万国共通なのかなぁ・・微妙に違うのも
あるんでしょうね。
黒は大人になってから大好きになりました。
黒猫は飼い出してから スキになりました(^_^)


こんにちは、なずなさん♪

色に関してだけ言えば、黒は明るい色にくらべて、やっぱり少し個性的・孤独・素直ではない色でしょうか・・・
でも、この猫が白猫だったら、結果は違ったんだろうか。
外見というのは、性格にも多少は影響するんだろうか・・・
なんだかこんな事を考えてしまいました(笑)
私はやっぱり、素直が一番!なんて思ってしまうんですが。

うちの黒猫は3匹の中で、一番いばってます!
やっぱり影響ないですかね(笑)

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

kazahanaさん~(^_^)

きっと 思いは通じると信じたいですよね。

あー、でも やっぱり一緒にいさせてあげたいなぁ・・・。
猫と ひっついているだけで 幸せなんだけどなぁ・・。

こんにちは^^

女の子と黒猫くんとが仲良くなっていくところが、自然な感じでいいですね。
お互いがお互いを自由にさせてあげられたら、きっと素敵な関係が築けるんだな~と思いました。
ホントに、相手を思いやる気持ちにあふれていて、心があたたまりました。
この離れていった黒猫くんの思いは、女の子にちゃんと届いてるんですよね。

ゆいさん aoiさん いらっしゃいませ。

桜じいさんはすごく長生きの桜なんだけど
その じいさんでも わからないことがいっぱいです。
特に 何が良くて どうすれば良かったか・・なんていうのは。
長生きしてるからこそ そんな風に 言うのかもしれませんが・・。

「黒猫 迷信」で検索したら 善いの、悪いの、いっぱい出てきましたよ~。猫は何か言いたげだからなんでしょうか・・ね。

昔、うちのおばあちゃんが言っていましたが、
黒猫を抱いて眠ると良いことがあるとか、幸せを呼ぶとか…
本当かどうか分からないのだけど、でも黒猫ってかわいいですよね!
それに、私、黒は好きです♪
黒ゴマ、ひじき、黒豆…と、黒いものは体に良いですし!

なずなさんの優しい気持ちがいっぱい詰まったお話♪
情景が浮かび・・・まるで絵本の世界に入ったようなそんな感じでした。
>本当に 何が良いかなんて 誰にも解からないさ
うんうん。結果ばかり求められる時代だけれど
今やっていること、過程が良いことかどうかなんて
長い月日が経たないとわかりませんよね。

フトンさん、どうするのが一番いいかなんて ほんとに解かりませんよね。
子どもさんに いつか読んで下さったら むっちゃ嬉しいです。
(*゚ー゚*)(*。_。*)(*゚-゚*)(*。_。*)
だるまさん、
光と影どちらも大切なんですよね。ホント。
またblogの小説の方も読みに行きますね。
やすみさん、
また 紅葉のさくらじいさんの お話を描きたくなるような 画像お願いしますね~。

コメントありがとうございます(^。^)

xx月神xx さん初めまして。
コメント残してくださって嬉しいです(^_^)

亜季さん、私も一緒です。「黒猫見たら」とか「霊柩車見たら親指隠せ」とか 「朝のクモは縁起が・・」とか 迷信だって解かっていながら 結構 気にしました。黒猫さんごめんなさいよね。
ウチにも 今、黒猫いるんですよ(^_^)

やさしくて切ない・・・

私も昔「黒猫が目の前を横切ったら不吉」って聞いていました。
中学くらいまでかな?やっぱり不吉って嫌だから
黒猫見たら3歩下がってなかったことにしてみたりしてました。
黒猫ちゃんに「ごめんね」って思いながら。
でも、高校くらいから「あ、黒猫だ」程度で不吉とか考えなくなって
今じゃ寂しいときに慰めてくれる黒猫ちゃんがいます。
慰めてもらうたびに昔のこと思い出して、
こうして今は幸せもらって
なのに悪いことしたなって泣きたいくらい嬉しくなるんです。
この物語を読んで、黒猫ちゃんの女の子への想いに泣きそうになりました。

(* '-')ノ ハジメマシテ☆
こういうお話の類のブログは好きです(*´ェ`*)ポッww
黒猫と桜じいさんの関係は素敵ですね。
ちょっと悲しい感じのお話なのにあったかい感じがあって、
ヽ(-゚ヽ)トッ!! (ノ゚-゚)ノテモ!!.。゚+.(゚ー゚)ノ。+.゚ イイ!!

σ(゚-゚*)は黒猫好きですね。黒も好き。闇も好き。
月を際立たせてくれる黒は、月好きの私には大好きな夜の色です(*ノω(*ノω(*ノωノ)ωノ)ωノ)スペシャルィャン
お邪魔しました ○┓ペコまた遊びに来ます(*´艸`)ププ

桜の紅葉の季節ですね。写真撮りにいかなくちゃ。でも、この辺は、あんまり綺麗じゃないんですよね。^^;

黒って色は、シックで好まれる色なのに、さあとなると、色々不吉だとか言われてしまう。
誰が言い出したのか、いつごろから、そんな風になったのか。

黒く生まれた猫ちゃんには、なんの罪も無いのですよね。。。

こんばんは

すべてのことに
陰と陽があるけれど
人は自然と陰を嫌いますからね・・・。
陽は確かに煌びやかですが
陰がなければ
それもまた
薄れてしまいます・・・。
それを
再確認できた気がします。
またきま~すw

そうですね。何が良くて何が良いかなんて、誰にもわかりませんね。
子供に読ませたい作品です。
もう少し大きくなって、理解できるようになったら、読んであげたいなww
特に娘に・・・・

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://nazunashortstories.blog12.fc2.com/tb.php/44-cb76ff1f

 | HOME | 

Monthly

Categories

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Appendix

すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

FC2Ad

管理者ページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。