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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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美術室には小鳥たち②

美術室には小鳥たち②です。
上の①からお読み下さい。


mituami.jpg




こういう時 言うべき言葉が見つからない。
キリエは 一瞬鉛筆の動きを止め 「三つ編み」の顔を見る。

「三つ編み」は こんなことを嘘や冗談で言う人ではない。
知り合って間もないけれど キリエにもそれだけは
信じられるような気がした。


グラウンドの野球部の掛け声と 吹奏楽の練習の単調な音だけが
静まり返った美術室に響いていた。

─ この絵を描いてた その「美術部のひと」はもういない。
  絵を完成させることも できない。
  そういうことなんだろうか?


「いのちって こんなに簡単になくなっちゃうんだって思ったの。
 交通事故、ほんとに一瞬のこと。
 ・・・・・・生きたかったのにね。」


後ろ姿の「三つ編み」の真っ直ぐに伸びた背中を見ながら 
キリエは返す言葉を 静かに飲み込む。

─ それなら余計、そのひとは、
  自分の絵に 重ね塗りなんてして欲しくないと思う。
  自分の手で ちゃんと仕上げたかったんじゃないのかな・・
  

この絵を描くこと、この人に係わり続けるということは
他人の悲しみに 踏み込む覚悟が 要るのかもしれない。

ずっと未完成のまま ずっと下描きのままの
キャンバスの上の「三つ編み」。
このまま キリエたちが卒業してもずっと
この棚の上に い続けるのか・・と思ったら
完成させて欲しいという「三つ編み」の気持ちも
少し 解かる気がした。



   *



「で、友達は できた?」 「三つ編み」が 聞く。
「転校生でしょ、それも数回 転校経験済み?
   ふふ 2年生なのに 制服新品だものね。」

「他人のこともできるだけ聞かない。答えがなくても 気にしない。
 自分のことも言わない。深入りしない?
 それって・・転校生として身に着けた 自分を守るワザ?」

返事も待たず 「三つ編み」が 重ねて聞く。

「友達なんて・・私は 別に・・」
「私はどう?友達? キリエちゃんは 私に名前も聞かないね?」

スケッチブックに書いたキリエのネームを指でなぞりながら
「三つ編み」の目は笑っていなかった。



*  *  *  *



「ヨシタニ キリエっ!
  今日 美術部部長と副部長、クラブ行かすからなっ。」

教室中振り向くような大きな声で ヤスモトが話しかけてきた。
おせっかいなヤツ・・声、デカすぎ。

部長、副部長はおろか、キリエが美術室に通いだしてから
実際のところ 「三つ編み」以外の誰も
放課後 美術室に来ないのだ。


「へぇ・・ヨシタニさんって 絵が得意だったんだぁ。
   もうクラブ入ったの?」

近くの席の 女子が聞きつけて 話しかけてくる。
「美術部顧問って 今いないんでしょ、ヤスモト?
 産休の先生 クラブ顧問はしないんだって。
 ああ、タナカちゃんって そろそろ臨月だっけ~?」

話は もうキリエを通り越して
キリエの知らない美術教師の おめでたの話に変わっていく。
会話の輪の真ん中の位置に立たされて、
解からない話題に 愛想笑いで相槌を打つ時間は
酷く 長く感じられた。


    *


「あ、そう?じゃあ、今日は モデルは休業ね。」

「三つ編み」は言って、さっさとドアの方に向かい 
廊下に一歩踏み出してから 少し立ち止まる。
そして 反らした上半身を教室側に残し、「三つ編み」は言った。

「いい友達なんじゃない?ヤスモトくん・・だっけ?」



「どこにでも 一人はいます。転校生が珍しくて 面白がって構うヤツ。
 でも すぐ飽きちゃうか 新しい転校生が来る・・。」

「そうかな?」
「違うって言えますか?」

「例えばさ・・・。
 小さい頃 家庭の事情で自分だけここに 住んでるの。
 遠い親戚に預けられて。
 親の育児放棄のせいで愛情慢性不足ぎみ。

 自分がこの土地になじむまで それは 辛かったから。
 ずっと寂しかったから・・。
 でも溶け込んでみたら 結構ここで楽しみも見つけられたから

 そんなヤツだから 他人のこと 気になるの・・」

「ヤスモトが?」

聞き返すキリエの目を「三つ編み」は 真剣な目で見返した後 
スイッチが切り替わったかのように 驚くような明るい顔で笑った。

「ふふ、そんなこともあるかもしれないし ないかもしれないね。
 ああ、今のは 私が作った話だから。
 ヤスモト君は 私の知り合いじゃないし。」

一瞬信じた。
なあんだ・・と キリエは急に力が抜ける。

「ま、だから 不幸な子だとか、
 だから自殺願望があるだろうとか
 勝手に大人に想像されるのが 一番 迷惑なんだな、
 こういう 場合。」

呆け顔のキリエを 一人残し
「三つ編み」は 向こうを向いたまま そう付け加えると
じゃあね、と手を振った。


  *


「じゃあーん。部長のアサギ君と副部長のフクオカさんでえっす~。」
ついさっき 静かに閉じた戸が 騒々しい音とともに開けられた。

「帰宅部の星、ヤスモト君もわざわざ来てやったぞ。」

ヤスモトに制服のジャケットの襟をつかまれた男子1名、
ひとなつっこそうなエクボの女生徒1名。

キリエは スケッチブックを閉じて鞄の脇に置き、会釈する。

「3年は引退してるから 私たち同じ2年。
 アサギ君は3組、私は1組。 ヨロシクね。」

─ アサギ君は生徒会やってて、私はコーラス部と掛け持ちなのよ
フクオカさんはキリエに あまり来られない理由を説明した。


「二人ともサボってばかりいないで、絵、描きんしゃい。
 新入部員が一人ぼっちでクラブしてるなんて
 寂しいでしょ、なぁ、ヨシタニ。」

「オマエこそ、フラフラ帰宅部で 
  退屈してるんだったら 美術部来れば?」
アサギ君はヤスモトの 首を絞める格好をし 
ヤスモトは派手なリアクションをする。

─ 男子って こんな風にじゃれあったりするんだ。
キリエが 珍しそうに眺めていると 
フクオカさんがキリエの肩を叩きながら 笑った。
「可笑しいでしょ。周り、こんなバカばっかり。」


人が集まるだけで 同じ部屋がこんなに違うのか・・と思うほど
その日の美術室は 活気があった。
モノクロの絵に色彩がついたよう・・
キリエは 壁や天井を初めて見るもののように 首を巡らして見た。


ヤスモトは 思いつく限りの 学校の話題を提供しつづけ、
フクオカさんとアサギ君の二人は キリエにも解かるよう、
補足しながら会話した。

キリエの担任の物理のモリモトは ここの卒業生で 
遠い地方の学校から 最近赴任してきたことや
実は 絵が上手いらしいなんて話も このとき初めて聞いた。

フクオカさんは コーラス部で練習してる曲を男子二人に指導し、
二人のあまりの下手さに キリエも思わずふき出した。


窓の外では 鳥たちが木の実をついばんでいる。
下手な歌声を 面白がるかのように 一羽の鳥が
一番近くの枝にとまって チチチと鳴いた。


    (③に続く)







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コメント

放課後の音

野球部の掛け声って 何て言ってるのかなぁ・・っていつも
思ってました。「オーエー」って聞こえたんだけど・・。
演劇部や放送部とか さかんだったら 発声練習のアエイウエオアオとかも聞こえるんだろうな。
三つ編みさんは正体がバレないで 興味を最後まで保つようにするのが 私には難しくて、会話がこの程度になっちゃっています(^_^;)

ど~もw
あっ・・・そういえば・・・みたいな感じの学校のあの雰囲気
放課後の学校はいつも吹奏楽と野球部の掛け声だったきがするw
う~んほんとなずなさんは忘れていたなつかしいものをうま~く使いますね~w
話題がそれてしまった”元”話題の人・・・こうゆう時すんごくみんなが遠くに感じちゃいますよねw
私的にもっと三つ編みとの交流がみたかったなw
でもいい作品ですよww
ではではw

やすみさん、ありがとっ!

ていねいに読んでくださってありがとうございます(^。^)
いつもより長く、登場人物も増やしてみたので まとめきれてない気もします。ウン。
③もUPしつつ いつものように 細かい手直しは していきたいと思います。m(__)m
(先に読まれた方には 申し訳ないですっ。)

あ、私も、福永武彦さんは 好きです。

これはこれでいい。まわりの同級生の話も入って、学校の雰囲気とか、キリエの転校生の立場とか、わかるのでいいのだけど、もう一段、テーマが絞りきれていない気もする。

読者の立場としては、この三つ編みの少女の存在は、結構気になるものなのね。

だから、このキリエを大きく書くのだとすれば、この三つ編の少女のことは、それほど踏み込んで書かなくていいと思うし、ここまで書くのなら、もっと、この三つ編みの少女とキリエの心の交流をもっと深く書いた方が、より、面白いものになると思う。

私が好きな作家に、福永武彦と言う人がいるのだけど、この人の作品に、「忘却の河」というのがあって、これは、アパートの一室で、主人公とヒロインだけなの。

まあ、私の好みからの話になってしまうかもしれないけど、いままではどちらかというと、童話の世界であった。でも、今回は、もう一段、レベルアップしてるような気がする。

このお話のプロットが出来てるのなら、それはそれで完成して、この二人のお話をまた、別に書いてみて貰うと面白いなと思った。(^^)

aoiさん、あと1回分で お話は終わりです(^。^)
読んだ人が 良かったなぁって思ってもらえる終わり方に
なってれば いいんだけどな。
お楽しみに~っていうのも ちょっと恥ずかしいような気もしますが・・**(/▽/)**
ぬいこさん、コメントありがとうございます~。
会話が上手く進むと 書いてるときも楽しいです。
絵は あの絵日記のツールの他、ペイントショップというソフト、
それからね、ここ↓でも描いてます。
http://curuhome.cururu.jp/nazunacat
自分にあったツールを探すのもまた 楽しいですヨ。
どれも 使いこなせてないんですけどネ・・(_ _。)・・・シュン

なぞの少女

「三つ編み」の正体は?

転校生を囲む生徒たちの会話のテンポが小気味いいですね。
少女の理知的な瞳もすてき。。

なずなさんは「絵」はHPの お絵かきすと に描いていらっしゃるのですか? お上手ですね。。 
わたしも、おなじようなお絵かき掲示板(非公開)で練習しているのですが、う~~~ん。ムズカシイ。
細い線で描いたほうがいいのかなぁ……?

こんばんは!

「三つ編み」の過去、そして絵を描いた人物は一体…
物語の展開は、これからどうなるのでしょう!?
また、続きを読ませていただきますね。
頑張ってください!

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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