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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

アスファルトに星屑踏んで(アタシが猫だったころ)①

Mystery Circle2月の作品です。
①②③に分けてUPします。



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2月のお題~
今回はいつものルールと違って、参加者全員同じお題です。

「ただただ ぐるぐるぐるぐる 
アタシは そうありたくてここに来たのに、
たとえば アスファルトの光を見ただけで
中途半端に感傷に浸れる余裕を、贅沢を、
何でまだ持ってんの?」で始まり
「「そんなはずじゃなかったのに。
そんなんじゃここに来た意味がないのだ。」が 中にあって
[アンタは私にしか懐かないのかと思ってた。」で 終わること。

     お題出典:『ハッピーエンド』 著:ジョージ朝倉 



* * * * * *




ただただ ぐるぐるぐるぐる・・・・
アタシは そうありたくてここに来たのに、

たとえば アスファルトの光を見ただけで
中途半端に感傷に浸れる余裕を、贅沢を、
何でまだ持ってんの?


  *  *

始まりは あの猫屋敷の庭。
高2の春から夏にかけて 
アタシは学校のある時間、いつもそこにいた。

家にも学校にも 
自分の居場所をほんの数ミリだって感じることができず、
ふらふらと当てもなく歩いている時に、
ぐるぐるぐるぐる喉鳴らし、足に纏わりつく猫がいた。

「何 媚売ってんだよ。エサなんかやんないよ。」

かつて猫に好かれたこともなかった。
甘えられる理由も思い当たらない。
擦り寄ってくるこんな小さな生き物にさえ 
その頃のアタシは優しくなれなかった。

「ただの、暇つぶしなんだからね。」
振り返りながら先を行く猫の後を付いて行くと その庭があった。

一面の雑草。 
曲がりくねった木はてんでばらばら、好き勝手に生えてる感じ。
そんな木々に つる草が何重にも巻きついている。
ガーデニング好きのアタシの母親なら
広いのにもったいないと悲鳴を上げそうな、そんな庭だった。

そのあちらこちらの陽だまりに10匹を軽く超える猫たちがいて
うつらうつらしたまま、またはペロペロと毛づくろいをしながら
新参者のアタシを 当たり前のように受け容れたのだった。



*  *

そこから少しの間 遠ざかった期間がある。 

秋草が庭いっぱいに広がる頃 アタシは勘違いな恋をしていた。
その人がアタシの、「やっと見つけた唯一の居場所」だと思った。
嬉しかった。幸せだと思っていた。

居心地のいい大事な場所になっていたはずの猫屋敷の庭のことを
数の内に入れるのを忘れてしまってたのは 
認めたくないけど アタシがやっぱり 
「人のいるところ」を切に望んでいたからだろう・・と思う。


勘違いな恋は、ありがちな終末を迎えた。

キミはまだ子どもだから と言われ、
自分をもっと大切にしなさい と言われ
あれこれご立派な理由をつけ、
その男は妻と子のもとに戻ったのだった。

 * *

何もかも嫌いになって 誰も彼も嫌いになって
たどりついたのは 相変わらずの その場所。
猫屋敷の庭だった。

のそのそやって来てピタリ寄り添うように座り
ぐるぐるぐるぐる・・・
アタシの傍に例の猫が来て喉を鳴らす。

ぐるぐるぐるぐる・・
不思議な振動が伸ばした指先に伝わってくる。
快感?安心?それとも信頼?・・まさか愛情?
そう思った自分が バカみたいに思えて
そいつの鼻先をピンとはじいてみた。

猫は驚いて少し離れたけれど 別に気にするでもなく
背筋をひゅーんと伸ばして大あくびし
座り直し、丸くなり 気がついたら 眠っていた。
そんな風に自分勝手にくつろげる猫が
憎たらしくて 羨ましくて
「猫になりたい。でなきゃ、死んじゃいたい。」

地面にうつぶせになって手足ひっこめて 猫のように地面を掻いた。
秋草の枯れた地面の土は冷たかった。

  *

「じゃ、猫になってくれる?」

突然話しかけられて驚いた。

「2のBのキシカワさんだよね?」
ひょろりと背が高い男子、うちの学校の制服。
同年齢にしては幼い笑顔が アタシの名前を口にした。
さっと起き上がり 身構える。
敵とは思えないけど、ずけずけ踏み込んでくるヤツは嫌いだ。

「へへ、ほんとに猫みたいだね、キシカワさんってさ。
 オレ 隣のクラスのマツオカ。」
この笑顔を 知ってる気がした。
でも思い出せなかった。

「睨まないでよ・・・ここ オレんちの裏庭。」
マツオカ君はしゃがんで
擦り寄ってきた2匹を いっぺんにぐしゃぐしゃ撫でながら言った。

  *  

マツオカ君には お姉さんがいるという。
ユリハさんというその人は 結婚してこの猫屋敷から出て
そう遠くないところで暮らしているらしい。
色々な事情で 精神的に参っている上に、
可愛がっていた猫まで どこかに行って戻ってこない。
「いわゆるペットロスっての?もう壊れかけ、うちのねーちゃん。」

だから 通い猫のように ふらりと気が向いた時でいいから 
アネキの様子を見てきて欲しい・・バイト代払うからさ、頼む。
マツオカ君は言った。

「アタシ、猫です、とか言ったら、きっと信じて喜ぶから。」
「まさか。」
「なんせ、壊れてかけてっから・・・。
 それに キシカワさんって そーとー猫っぽいし。
 家に上がって ぐるぐるぐるとか言ってさ、 
ねーちゃんの心を癒してくれたら,
あとは 昼寝でもなんでもテキトーにして、
飽きたらフラッと帰ったらいいよ。」


「でも・・・何で?」

「ひとりでほっとくと死んじゃうかもしれない。だから。」


傍から見たらトンデモナイ話に心捉われ、壊れていく大切な友人を
必死で引き留めるため、その人の所に通う・・・
そんな話を どこかで知ってる気がした。
映画だったかドラマだったか・・小説だったかもしれない。

アタシは色んなことを 色んな大事なことを
何にも思い出せないでいた。



* * *
バイト代といって マツオカ君がポケット裏返して出したのは
ほんのぽっちり、バス代とアメ3個、
コロリとビー玉がひとつ、転がり出した。
「何で こんなの持ってんの?」
アタシが言うと、マツオカ君は結構真面目な顔で
「ビー玉 覗いたことって、ない?」

断るアタシに まあいいから、って ビー玉まで押し付けた。


「どーでもいいんだけどさ。
 どーせアタシは他に行くところも することもないし。
 でも、責任は取らないよ。
 アンタの姉さんがどうにかなっちゃったって。」
わざと投げやりに言ってから 
アタシはその人のところに行ってみることにした。

誰の気持ちにも、もう振り回されたりしない。
何がおきたって アタシはもう悲しんだりするもんか
・・ポケットのビー玉のつるりと冷たい感触を確認しながら
そう思っていた。


  (②に続きます。

コメント

ふはは、次々と美女が役を演じてくれますね。

私の頭の中には漠然と その辺にいる普通の少女の顔しか
浮かんでないので そういった感想も面白いです(^_^)

僕の頭の中では主人公(キシカワさん)は酒井美紀さんです。猫顔って言ったら観月ありささんがぴったりかも知れませんが、若かりし頃の顔が思い出せなくて・・・。
Mstery Circleも難しいお題を扱っていたんですね。僕はミソ付けられそうです。
それでは第2章に行きます。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

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喜びます。

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