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生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

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アスファルトに星屑踏んで(アタシが猫だったころ)②

アスファルトに星屑踏んで②です。
何だかこの頃 やたら長くなってます。(^_^;)



tora.jpg




*  *  *  *
 
マンションの庭付き一階・・・
─ 猫としてはチャイムより庭からだろう・・
フェンスを乗り越えて潜入した。
フェンスから スチャっと飛び降りるとき 猫の気持ちになった。

開け放たれた庭に面した窓、そっと覗くと
スラリとした髪の長い女の人の後姿が見えた。
パソコンに向かっているけれど キーボードを叩く様子はない。
その日は そのままずっと庭にいて様子を見、 
帰ってからマツオカ君に 
ユリハさんの様子をごくごく事務的に報告した。


次の日 同じように庭にいると ユリハさんは
窓を開け、隠れようとしたアタシを じーっと見た。
まるで 猫好きの人が 
猫の意思を尊重しながら 徐々に仲良くなろうとするように
ユリハさんは身体をかがめ、少し目を細めてアタシを見、
小さな声で「ニャー」と言った。

あまりの展開にアタシはうろたえ、隣の庭との隙間に逃げ込んだ。
何だかほんとに猫になった気分だった。

帰りのバスで料金箱にお金を入れ、
シートに座っても誰も気にしない様子を見て
改めて、やっぱアタシは「にんげん」らしい・・そう思った。
だから嬉しいとは 思わなかったけど。


*  *  *  *

親の諍いやらアニキと親の揉め事やら 家はますます険悪だったし
そんな親が世間体のためだけに 学校に行ってくれと言ってるのが 
見え見えで、たまらなくウザかった。
「親友」だったマキも 上手くどこかのグループに入れたみたいだし
今更のこのこ 出て行きたくもない。


誰?と聞かれて「猫です」と
自己紹介をすることを想像しては ひるんでいたが
ユリハさんは 数日通っても、アタシに何も話しかけなかった。
本当に私は猫に見えてるんじゃないかと思うほど 
ユリハさんのアタシに対する態度は相変わらずだった。

ユリハさんは庭の網戸を少し開けたままにして 
目線だけでアタシを自然に室内に招きいれた。
部屋の中はほっこり暖かくて、
清潔で 静かで 居心地が良かった。
 

帰りに猫屋敷の庭に寄る。
マツオカ君はとびきりの笑顔で アタシの面白くもない報告を聞き
例の猫は「お帰り」とでもいうように アタシの足に擦り寄ってくる。

「べたべたすんな。どうせ誰にでもそうやって媚売って生きてんだろ?」
甘えた猫は嫌いだ・・・
アタシは いつもわざとその猫に冷たくした。

  *

それから毎日 アタシは部屋の一番暖かい場所で 
ごろごろうとうとしながら ユリハさんの様子を見守った。
アタシがそこに居ることが 
ユリハさんにとってどんな意味があるのか 全然解からなかったけど、
人の気配のする静かな空間は アタシにとって心地良い場所だった。
ユリハさんは 時々独り言を言いながらうろうろしたり
たまに座って、ぽそぽそとパソコンのキーを叩いていた。
ぼんやり画面を眺めている時間も 相当長かったが
落ち込んだり ふさぎ込んだり 泣いたりしてはいなかった。



「落ち着いてるみたいだよ。」
ユリハさんのことをマツオカ君に報告すると
マツオカ君は 満足げにうなずいて 
「良かった、良かったぁ。
 ありがとう、キシカワさんがいてくれて、ホントに良かった。」
いつもマツオカ君が猫にやるのと同じように 
頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。
何だか照れくさかった。 頭の上が温かかった。

帰り道、ポケットに手を入れると コロンとした物に触れた。
取り出して、空に向けて持って覗いてみる。
水の中にいるような 宇宙にいるような 不思議な気持ちになった。
こんな風に ビー玉を飽きずに覗いていた時があったっけ・・
アタシは すっかり忘れていた小さい頃のことなんか 
ふと思い出したのだった。

  *

何もかもどーでも良くて 無感動なっていたはずだった。 
なのに 猫の目線になって、窓から外なんか眺めているうちに
小さな自然の変化だとかそういったものに 
目がいくようになっていた。

ユリハさんが 窓の外を見てさりげなく呟く言葉は 
アタシに小鳥のさえずりや 季節外れの花のつぼみや
ぺたりと地面に貼りついて春を待つ草の存在を 気づかせてくれた。


ただただ ぐるぐるぐるぐる・・・・
アタシはそうありたくてここに来たのに、

たとえばアスファルトの光を見ただけで
中途半端に感傷に浸れる余裕を、贅沢を、
何でまだ持ってるんだろう・・

いつもよりユリハさんの部屋に長居した日の帰り道
雨に濡れたアスファルトが 外灯の光でキラキラするのを眺めながら 
そんなことを 思ったりもしたのだった。



*  *  *  *③に続きます


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コメント

主人公の目線で 読んでいただいて、「なんか謎な女の人」くらいに 思っていただければ十分ですよ(^_^)

牛か豚ですか・・あたしは何がいいかなぁ・・。
考えてみます。やっぱ猫がいいかな。

ちょっとユリハさんに対する感情移入が難しいですが、それでも物語が自然に入って来ます。
僕は動物のふりをしてくれって言われたら牛か豚しか出来ないだろうな。
それでは最終章に行きます。

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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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