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STAND BY ME

生きることにちょっと 不器用な子どもたち、もと子どもたちの 短いお話を 綴っています

「く」~クリスマスキャロル

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「サンタさんって・・本物?」


店頭販売のケーキの箱の山の向こうから、可愛い声がした。
ひょっこり頭を覗かせたのは6~7歳位の女の子。

ニットの帽子は被っているものの、
パジャマのような服にキルティングの上着、
足元も何だか 寒そうだ。


トウコは どう答えたものか解らない。
愛想笑いを返しただけで、
用もないのに ケーキの箱を 並べ直したりしていた。

ぱらぱら来るお客の相手をしていても、
女の子は気にせず 話しかけてくる。




「いいな、ケーキ屋さん。私もケーキ屋さんになりたかったな。」


何も好きでサンタのなりして、クリスマスケーキ売ってるわけじゃない
・・トウコは思う。
アイツに24、25日って暇? って聞かれて、
変な期待をしたのが間違いの元。

しっかりバイトを押し付けられた。


クリスマスケーキ売りに、25過ぎたお姉さんねェ・・・
店長はトウコを見て言い、
まぁサンタらしくしてよ・・と ブカブカの衣装を手渡した。





女の子は 返事もしないトウコに向かって ニコニコ 話し続ける。

「あのね、私ツリー見に行くの。公園に大きな木があって、
すごく奇麗 なんだって。
きっと見に行こうねって約束したの。」

 ━その格好じゃ寒いんじゃない?
  お母さんとか どこにいるの? 風邪ひいちゃうよ。

以前のトウコなら絶対 しゃがんで、そう話しかけたはず。




女の子の服装・・色の白さ・・
思い出すのは、この間辞めてきた職場・・・病院。

小児病棟の子供たちも 大きくなったらなりたいものを色々言った。
○○屋さんが多かったな。
好きなものに囲まれる・・子供らしい発想・・。

いつからこんな風に なったんだろう。
忙しさにまぎれて、何を忘れてしまったんだろう・・。
こんなことするために、看護学校通ってたんだろうか・・・。





「じゃあ、もう行くね、サンタさん。」

女の子が手を振って 行ってしまう。
後姿が遠くなる。






トウコの心がざわめきだした。

「ゴメン、すぐ戻るから!!」

他のバイトの子に声をかけ、トウコは女の子の後を追った。




付けひげを取り、邪魔な帽子を外す。

あの子はまるで・・まるで・・そう小児病棟を抜け出してきた患者さん。
ううん、そうでなくても、あんな小さな子が一人、
こんな時間にウロウロしてたら大変だ。



サンタの服が目だって、酔っ払いが声をかける。

ボタンを外すのももどかしい。
上着を脱ぎながら早足になる。

私が小さいとき、なりたかったものは・・
・・なりたかったものは・・


息が白い。雪になりそうだ・・。
思い出しそうな何か、心に引っかかってる何か・・
久しぶりのこの町・・公園の向こうのあの病院、私知ってる。

ずっと若い頃・・看護実習に行ったところだ。





ジーンズの上からはいている ブカブカの 赤いズボンが
邪魔で走れない。
トウコは剥ぎ取るようにズボンを脱ぐ。



公園はもうすぐ
あの子はどこ?






角を曲がると、輝きが迫ってきた。
きらめく電飾。
光の渦。


あの時 窓の外、大きな木を見てた女の子に 
実習生の私は何を話したんだっけ。
何を見ようって、約束したんだっけ・・。





公園の大きな木は、目もくらみそうなクリスマスツリー
・・光の波がトウコに押し寄せてくる。

クリスマスキャロルが何処からか聞こえる。





 人ごみの中に
「やっと、一緒に見られたね。」
と微笑む 少女の姿を 

トウコは一瞬 見たような気がした。




    ★Merry X'mas★



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すずはら なずな

すずはら なずな

どれも短いお話ですが 
一つでも心に残ったら嬉しいな。

過去記事どこにでも、
コメントOKです。
舞い上がって
喜びます。

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